熊本日日新聞の報道によると、不動産情報サービス会社のAt Homeが、TSMCの進出に伴い地価が上昇を続ける菊陽町周辺の家賃動向に関する調査結果を発表した。今年、単身者向けの賃貸アパートの平均家賃は、菊陽町と大津町で2021年と比較して20~30%以上上昇し、熊本市のファミリー向け家賃をも上回った。
同社は自社の不動産情報サイトに登録された熊本県内の居住用賃貸物件について、TSMCの進出前の2021年と今年1~3月の家賃を比較した。TSMCの工場がある菊陽町では、単身者向けアパート(30平方メートル以下)の平均月額家賃が2024年に23.6%上昇し、4万9900円となった。ファミリー向けアパート(50~70平方メートル)は23.1%上昇し、8万1429円となった。隣接する大津町では、単身者向け家賃が36.7%上昇して5万9333円、ファミリー向けは11.8%上昇して7万3615円となった。
大津と菊陽が上回る 熊本市の単身者向け家賃は1%未満の上昇
一方、熊本市の単身者向け家賃は0.8%の上昇にとどまり4万1669円、ファミリー向け家賃は8.4%上昇して7万3421円となった。結果として、大津町と菊陽町の上昇率と家賃は熊本市を上回り、特に大津町の単身者向け家賃は熊本市より約1万8000円高くなった。
また、マンションの家賃については、菊陽町で13~16%、大津町で5~24%上昇し、いずれも熊本市を上回る上昇率となった。合志市の賃貸アパートとマンションの家賃も上昇傾向にある。
At Homeは「菊陽町周辺では、TSMC関連企業の従業員やエンジニアなど単身者の需要が特に高く、それが上昇率に反映された」と分析している。ただし、地元の不動産会社からは供給過剰や築20年以上の物件の空室増加を懸念する声も出ている。
また、メディアの報道によると、TSMCは第1工場での年内量産開始に向けて、先進的な水処理システムを稼働させた。運営子会社のJASMは、工場で使用する水の75%を再利用することを目指しており、半導体製造工程で使用した水の再利用や、工場内の空調冷却システムでの利用を含んでいる。半導体製造にはシリコンウェハー上の化学物質や塵埃を洗浄するため、大量の水が必要となる。第1工場がフル稼働した際には、1日最大3万立方メートルの水を使用する見込みで、このうち最大8500立方メートルが敷地内の井戸水から供給され、残りは回収水で賄う計画だ。
水処理システムは地下2階・地上4階の工場棟の地下2階に設置され、システム内の約300個のセンサーが24時間体制で監視を行い、フッ素などの化学物質を含む水を20種類に分類し、用途に応じて再利用している。硫酸などの化学物質は16種類に分類され、再利用できない部分は外部の専門業者に委託して他の用途に供している。シリコンウェハーの回路製造に使用する「レジスト」という化学品を低濃度で回収する半導体業界初の技術を導入し、熊本の第1工場でも同様のシステムを採用した。
第1工場がフル稼働した際の1日当たりの排水量は約5000立方メートルとなる。これらの排水は熊本市北部の熊本北部浄化センターに放流される前に、8種類のオンラインセンサーで水質が監視される。工場は法定基準よりも厳しい自主基準を設けており、基準を超過した場合は自動的に工場内のシステムに戻して処理を行う。また、工場では週1回、国の基準に基づき外部の第三者機関による排水の水質検査を実施している。健康への影響が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)については、規制対象となっているPFOS、PFOA、PFHxSなどの化学物質は使用していない。レジストなどに3種類のPFASが含まれているが、保管・輸送・使用・廃棄などの各段階で厳重に管理し、最終的に産業廃棄物として外部業者に処理を委託している。
TSMCの日本子会社JASMの水処理担当マネージャーである黄冠諭氏は、「水処理工程を細分化することで再利用をしやすくしている。台湾のTSMC工場では1滴の水を平均3.5回使用しているが、熊本では4回を目標としている。また、工場では地下水位をモニタリングしており、異常が見られた場合は自動的にポンプを停止して過剰な汲み上げを防止している」と述べた。黄マネージャーは、台湾工場での水処理技術を十分に活用し、熊本の地下水資源を大切にしていく考えを示した。
編集:佐野華美
台湾ニュースをもっと深く:風傳媒日本語版Xをフォロー👉 @stormmedia_jp