「私にとって、辞書の中で最も美しい文字は関税(tariff)である。これは私の最も好きな言葉である」トランプ氏は先月、シカゴ経済クラブ(Economic Club of Chicago)でのインタビューで述べた。
「関税マン」トランプの核心政策
米国共和党大統領候補のドナルド・トランプには多くの驚くべき政策があるが、「関税」は彼が最も真剣な政策である。トランプは自身を「関税マン」(Tariff Man)と称し、「輸入品への懲罰的関税賦課」が彼の経済アジェンダの核心であると非常に明確に表明している。多くの経済学者が懸念を示し、彼の第一期政権でも実際の運用結果があったが、トランプは包括的な関税賦課がインフレを引き起こし、世界貿易戦争を引き起こすという見方に同意していない。
関税を「万能薬」と主張
トランプは関税が万能薬だと主張し、関税は補助金の代わりとなり、米国政府が資金を出さなくても製造業を回帰させ、習近平の台湾侵略を抑止し、さらに米国の雇用機会と経済成長を創出できると考えている。しかしトランプの第一期政権は関税を中国に対して用いたが、現在は欧州連合(EU)も米国の関税賦課の対象となりつつある—米国への輸入品には関税が課されるが、中国が多く支払い、EUは少なめという形である。トランプはさらに「関税を金儲けの道具として使うこともできるし、企業を獲得する手段としても使える」と明言しており、彼の「台湾は保護費を支払うべき」「台湾は米国の半導体の仕事を奪った」などの主張と合わせると、やや衝撃的である。
トランプの一貫した保護主義
現在は共和党の旗印の下で選挙戦を戦うトランプだが、過去に民主党や改革党にも所属していたが、国際貿易問題における彼の立場は一貫している。1980年、トランプがホワイトハウスとは全く無縁だった時代から、他国が米国を利用している原因は自由貿易にあり、解決策は当然輸入品への関税賦課だと主張していた。しかしウィキペディアで「Tariff Man」を検索すると、19世紀末の米国大統領ウィリアム・マッキンリーもこの呼び名を持っていたことがわかり、米国政府の関税への選好はトランプから始まったものではない。
米国の関税政策 歴史的変遷
「アメリカの声」によると、大英帝国が18世紀末に保護主義から自由貿易へと転換したにもかかわらず、米国は独立後、長期にわたって新興産業の発展のために関税に依存し、関税は連邦政府の最も重要な収入源であった。20世紀に入っても、米国は依然として最高関税率を持つ先進国として名を連ねていた。米国が保護主義から自由貿易へと転換した鍵は、第二次世界大戦後、関税削減を通じて西側貿易を促進し、共産主義世界に対抗することにあった。冷戦終結後、自由貿易を強調する新自由主義思潮が興隆し、当時は企業が支持する共和党が市場主導の貿易政策を推進し、逆に労働者と労働組合を支持する民主党が保護主義的立場を取った。
この点から見ると、トランプの関税への選好は実際には共和党の政策綱領と大きく異なっている。「アメリカの声」は、トランプが関税は米国経済に利益をもたらすと主張しているものの、その影響は実際には功罪相半ばしていると指摘している。関税は輸入部品や材料のコストも引き上げ、これにより米国の製造業もコスト上昇を余儀なくされ、最終的に価格上昇という形で消費者に転嫁される。さらに他国も同時に貿易障壁を築いて報復するため、米国の輸出産業の収入と雇用機会も影響を受ける。農業を例にとると、トランプ政府は当時160億ドルの援助計画を承認し、国内農家が貿易戦争のコストを相殺するのを支援した。
両党が支持する新たな保護主義
トランプは関税の打撃範囲を拡大すると宣言しているが、「アメリカの声」はその手法が「見かけほど過激ではない可能性がある」と考えている。なぜなら、米国は戦後も自動車と農業に保護主義を実施しており、バイデン政権でさえもトランプ時代の多くの関税措置を維持し、さらにハリスも重要産業での関税措置の継続を支持しているためである。現在、民主・共和両党がある程度関税を支持しているのは、新型コロナウイルス感染症とウクライナ戦争勃発後のサプライチェーン分断に関係し、さらに地政学的な敵対者への経済依存を減らすことに関わっている。そのため、たとえトランプがホワイトハウスに戻れなくても、米国が数十年前の自由貿易の合意に戻る可能性は低い。
編集:佐野華美
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