2016年にさかのぼると、トランプ氏が初めて大統領選に出馬した際、経済問題の矛先を中国と彼が不公平だと考える貿易慣行に向けた。彼の見方では、北京のこれらの行為は米国経済に深刻な損害を与えていた。そのため、ヒラリー・クリントン氏を破って白宮入りを果たした後、トランプ氏と政権チームは速やかに関税計画の実施に着手し、中国に対して一連の制裁と様々な制限措置を展開した。
再当選と新たな状況
8年後の今、3度目の大統領選に挑戦したトランプ氏は、再び中国を米国のブルーカラー労働者階級の生活を脅かす「元凶」として描き、この労働者層も実際に彼を支持し、副大統領カマラ・ハリス氏に投票で勝利させ、トランプ氏の二度目の白宮入りを実現させた。これを受け、『ブルームバーグ』は8日の報道で、今回トランプ氏が直面する中国は、8年前とは全く異なる競争相手であると警告している。現在の中国は多くの技術開発において自主生産目標を実現できており、これは部分的にトランプ氏が当時仕掛けた貿易戦争の結果であり、中国企業が自力更生を余儀なくされたためである。
対中政策の功罪
ブルームバーグの見解によると、トランプ前政権期の対中制裁関税や様々な技術規制・制限は、確かに短期的には米国に貿易バランスの利益をもたらし、同時に中国企業を技術と最新製品の困難な状況に陥れ、人工知能(AI)開発に不可欠な先進チップなどの分野で、米国が優位性を維持し、中国との差を広げることができた。
しかし中国は過去8年間、国家による強力な支援の下で技術と工業力を大幅に向上させ、バイデン政権が継続した貿易・技術制限措置は、逆に中国の国内生産能力と技術力を強化する結果となった。新たに就任するトランプ政権が、貿易戦争や技術禁止令の手段を継続し、あるいは彼自身が述べた60%の追加関税のようなさらなる制裁的関税政策を導入した場合、最終的に逆効果となり、米国が孤立するだけでなく、米国本土の労働者にさらなる打撃を与える可能性がある。
復旦大学・沈丁立氏が分析
上海復旦大学の米国政治専門家である沈丁立氏は、「トランプ氏の権力舞台への復帰は、間違いなく中国にとってより大きな機会とリスクをもたらすが、最終的にリスクが多いのか、それとも機会が拡大するのかは、双方がどのように相互作用するかにかかっている」と考えている。彼の見方では、トランプ氏が保護主義的な貿易政策と「取引的」な外交手段を執着して推進すれば、今後数年で米国と同盟国との関係を弱め、さらには世界的なリーダーシップにも影響を与える可能性があり、その時、中国にとって空白を埋め、新たな世界秩序を形成する機会となるかもしれない。
今後の焦点
トランプ氏は選挙期間中、すべての中国製品に60%の制裁関税を課し、「永久正常貿易関係」(PNTR)の地位を剥奪すると公然と脅した。これは米国と外国との自由貿易を定める法的関係であり、過去20年以上にわたり、中国は米国との最恵国待遇を享受してきた。
もしトランプ氏がこの制裁措置を実施すれば、不動産危機、消費需要の低迷、地方政府債務の増大に直面する中国経済に重大な打撃を与えることは必至である。投資銀行マッコーリーグループの試算によると、関税が60%に引き上げられた場合、中国の成長率を2ポイント押し下げ、これは中国の年間5%の経済成長率のほぼ半分に相当する。
メディアは「北京のチャンス」も指摘している。取引で約束を得ることを好むトランプ氏に対して、台湾防衛にそれほど関心を示さない彼の姿勢を利用し、ポジティブなインセンティブと脅しを組み合わせた手段で、米国に台湾問題でより大きな譲歩を引き出し、さらにワシントンの台湾への軍事支援を減少させる可能性があり、これはまさに多くの学者や企業が最も懸念している点である。
編集:佐野華美
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