TSMCの海外展開加速、しかし「台湾優先」は不変
台湾積体電路製造(TSMC)の海外展開が加速している。ドイツ工場が起工式を行い、米国と日本の工場も稼働間近だ。しかし、経済学者の馬凱氏は「TSMCと政府の方針は依然として台湾優先だ」と強調する。
「護国の砦」揺るがず、台湾の圧倒的優位性
TSMCの魏哲家董事長は、8~9割の生産能力を台湾に残すと明言している。馬氏は「TSMCが自ら台湾の重要性を低下させるような変更を望むはずがない」と指摘。
海外工場のコスト高、戦略的な判断
TSMCの米国アリゾナ工場のコストは台湾の4~5倍。それでも進出する背景には、米国政府の要請とアップルの現地サポート需要がある。日本工場については、日本側の積極的な協力姿勢により設立が迅速に進んでいるという。
台湾の半導体サプライチェーン、他国の追随を許さず
台湾の半導体産業チェーンは長年の発展で強固な基盤を築いている。馬氏は「台湾の狭い国土ゆえに密集したサプライチェーンが形成され、取引速度の面で他国の追随を許さない」と強調。このエコシステムを丸ごと移転するのは事実上不可能だという。
他国を決して追い越させない姿勢
馬氏は「TSMCは決して日本や他国が台湾を追い越すことを許さない」と断言。海外工場の進捗は意図的に台湾よりも遅らせる方針だという。
TSMCの海外展開は、グローバルな半導体供給の安定化に貢献する一方で、台湾の半導体産業における圧倒的な優位性は揺るがないものとみられる。緻密なサプライチェーンと低コスト生産体制という台湾の強みは、当面他国が追随することは困難だろう。TSMCを中心とした台湾の半導体産業は、まさに「護国の砦」としての役割を今後も果たし続けると予想される。 編集/高畷祐子