中国福建省政府は29日、台湾住民向けの新たな措置、「中共中央、国務院の福建における海峡両岸融合発展の新路探索と両岸融合発展モデル区建設支援に関する意見」の第3弾措置を発表した。措置は対台湾金融協力の推進、台湾住民の福建での発展支援、対台湾司法サービスの拡大、台湾住民の福建での生活・観光の利便性向上など4分野、計17項目に及んでいる。証券口座開設の利便性向上や台湾の看護師の就業促進などが含まれている。
台湾当局「中国の優遇策は効果なし」 経済低迷で企業・住民の関心薄れる
台湾の大陸委員会は29日夜、中国本土の経済下降と失業の大幅増加に加え、独裁的体制への不信感により、いわゆる「台湾優遇措置」は台湾企業と住民にとって魅力を失っており、期待される統一戦線工作の効果は得られないと指摘。
中国共産党の「連合利剣-2024B」軍事演習が10月14日に終了したばかりの中、習近平国家主席は福建を視察し、両岸文化交流の促進と、台湾同胞の民族的、文化的、国家的アイデンティティの増進を強調している。
致理科技大学国際貿易系の張弘遠副教授は中央通信社に対し、中国共産党は一方で軍事演習により台湾の主権を抑制し、他方で両岸融合の任務を担う福建を通じて台湾住民に友好的なメッセージを発信しており、本質は統一戦線工作の手段だと指摘している。
福建省、実績作りに躍起 専門家「習主席視察後の慌ただしい動き」
張弘遠は、今回の措置は統一戦線工作の目的と自身の政策ニーズを巧みに組み合わせたものだと指摘している。中国本土の経済不振により、資本市場はより多くの外資を必要としており、台湾住民の証券口座開設を奨励することは外資誘致の目的に合致している。また、台湾の看護師の就業促進は医療改革の大きな流れに沿ったものである。
中華アジア太平洋エリート交流協会メンバーの王智盛は、中国共産党は対台湾政策において軟硬両様の戦略を継続しており、福建がこの時期に新たな対台湾措置を打ち出したのは、習近平総書記の15、16日の福建視察時の両岸融合に関する発言への呼応とみることができ、「福建がKPI達成を急いでいるように見える」と述べている。
王智盛は、今回の新措置に目新しさはないとの見方を示している。中国本土の経済環境悪化は周知の事実であり、外資の撤退や株式市場の冷え込みにより、台湾住民への証券口座開設の奨励には魅力が乏しい。また、中国本土の給与水準や労働環境は、台湾の看護師を引きつける誘因とはなりにくいとしている。
編集:佐野華美
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