米大統領選挙の決戦期を迎える中、台湾の学者らは世論調査やスイングステートの動向から、ドナルド・トランプ氏の勝利確率が高いとの見方を示している。専門家らは、トランプ氏の高圧的な姿勢や「アメリカへの負債」という考え方、そして頼清徳総統の原則重視の理想主義的な性格により、台湾の戦略的選択肢がさらに制限される可能性を指摘している。
政治大学国際関係研究センターは30日午前、「2024年米大統領選挙と両岸関係」と題するシンポジウムを開催。同センター代理主任の王信賢氏が司会を務め、政治大学政治学系・東アジア研究所特別招聘教授の寇健文氏、同センター研究員の陳德昇氏、兼任研究員の劉復國氏、助理研究員の曾偉峯氏、国防大学中共軍事事務研究所教授の馬振坤氏が登壇した。
経済・移民問題が主軸、対中政策は後景に
冒頭、王信賢氏はトランプ氏の当選可能性が極めて高いと指摘。今回の選挙で意外だったのは、対中政策が主要な争点とならず、経済、移民問題、そして両候補の個性に焦点が当たっていることだと述べた。
TSMCへの地政学的圧力強まる懸念
劉復國氏は、トランプ氏の就任が両岸関係により広範な影響を及ぼす可能性を指摘。TSMCの例を挙げ、トランプ氏のTSMCに関する発言は選挙向けのレトリックだが、TSMCが直面する地政学的圧力への対応は避けられないと分析。トランプ氏のビジネスマンとしての本質から、米国の支援には必ず代償が伴うと警告し、台湾はその準備が必要だと強調した。
「中米関係は後戻りできない」専門家が警告
陳德昇氏は中米関係の観点から、トランプ氏であれカマラ・ハリス氏であれ、米国の「対中抑止」という基本姿勢は大きく変わらないと分析。ある台湾企業家の「中米関係、両岸関係、そして台湾企業の中国での政治的地位は、もはや元には戻れない」という言葉を引用し、中米関係の緊張緩和は期待できないと指摘した。
トランプ氏の自己中心的な外交方針に懸念
寇健文氏は政治家の個性に着目。ハリス氏当選の場合はバイデン路線を踏襲し、台米関係の予測可能性は比較的高いとした一方、トランプ氏については自己中心的な性格から、米国第一主義を貫き、他国を犠牲にすることも厭わない可能性を指摘。トランプ氏当選により、台湾への政治的・経済的圧力が増大する可能性があると警告した。
頼清徳総統の理想主義と習近平氏の対立構造
頼清徳総統については、寇健文氏は「理想主義者」と評価。習近平氏と同様、原則を重視し、敵味方を明確に区別する傾向があると分析。頼氏は戦争を回避しつつ、段階的に現状を変更する方針だと指摘。これにより、台湾の戦略的空間は制限されるものの、「小両岸」の観点からは中台関係に新たな展開をもたらす可能性があると述べた。
トランプ氏なら米国からの要求増大、ハリス氏なら対中圧力強化
曾偉峯氏は選挙結果について慎重な見方を示しつつ、誰が当選しても米中競争の構図は変わらないと指摘。トランプ氏は関税による制裁を好み、ハリス氏はバイデン流の「精密な打撃」を継続するが、いずれもバイデン時代以上に「戦略的曖昧さ」を強めると分析。台湾にとって、「トランプ氏なら米国への対応、ハリス氏なら中国への対応」という異なる課題に直面すると結論付けた。 編集:高畷祐子
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