「食べ物はどこに?」ガザ封鎖「解除」から3日、支援届かず 200万人が飢餓と空爆の二重苦に直面

2025年5月19日、ガザ地区北部で食料の配給を受けるパレスチナの避難民たち。食糧不足が深刻化する中、わずかな援助物資に人々が列を作ります。(AP通信)

イスラエルのネタニヤフ首相がガザ地区の封鎖解除を発表してから3日が経過したが、現地の人道状況は依然として厳しい。国連は、ガザへの支援物資搬入がほとんど進んでいないとして、200万人以上の住民が空爆と深刻な食料不足という二重の危機に直面していると警告した。

国連人道問題調整事務所(OCHA)の報道官、イェンス・ラーケ氏は20日、スイス・ジュネーブでの記者会見で「ネタニヤフ首相が封鎖解除を宣言した後も、わずか5台の支援トラックしかガザに入っていない」と説明。支援団体のスタッフは依然として物資配布の許可を得られていない状況にあり、イスラエル側は約100台分の許可を出しているとする一方、実際の通行は認められていないと述べた。

2025年5月21日、年僅2歳のパレスチナの子どもファラー・アル・バズ(Farah Al Baz)さんはイスラエル空襲で命を落とし、遺体は急いでアルアクサ病院に運ばれました。(AP通信)
​2025年5月21日、わずか2歳のパレスチナ人少女ファラー・アル・バズ(Farah Al Baz)さんが、イスラエルによる空爆で命を落としました。遺体は急ぎアル・アクサ病院へと搬送されました。(AP通信)

ロイター通信の22日付の報道によると、少なくとも15台のトラックが検問所を出発し、ガザ中央部にある世界食糧計画(WFP)の倉庫へと向かった。

一方、イスラエルの担当者は20日、「この日だけで93台のトラックがガザに入った」と主張。ただし、食料や医薬品の配布が許可されたかどうかについては言及を避けた。

イスラエル国防軍(IDF)元副参謀長ヤイール・ゴラン(Yair Golan)。(AP通信)
イスラエル国防軍(IDF)元副参謀長ヤイール・ゴラン氏(Yair Golan)。(AP通信)

こうした中、イスラエル国内でもネタニヤフ政権の対応を疑問視する声が上がっている。イスラエル民主党のリーダーであり、国防軍(IDF)の元副参謀長でもあるヤイール・ゴラン氏は、現状について「イスラエルは赤ん坊を殺すことを楽しむような国へと変貌しつつある」と強く非難。「理性的な国家は民間人を標的にしない」とラジオ番組で発言し、政権の軍事行動を痛烈に批判した。

ゴラン氏は、イスラエルが南アフリカのアパルトヘイト時代のような国際的孤立へと向かっていると警鐘を鳴らしている。これに対しネタニヤフ首相は「反ユダヤ主義的な中傷だ」としてゴラン氏の発言を強く非難した。

しかしゴラン氏はその後の記者会見でも主張を変えず、「ハマスの攻撃に対抗するのは正当だが、現在の戦争はもはや腐敗している」と述べ、沈黙を続ける左派勢力に対して「声を上げるべきだ」と訴えた。

英紙『ガーディアン』は、イスラエル国内の不満がネタニヤフ政権の軍事的失敗に向けられているとしながらも、ガザでのパレスチナ人の犠牲や飢餓への関心は相対的に薄いと報じている。仮にすべての支援物資が搬入されたとしても、戦前の1日の供給量の5分の1にしかならず、11週間も封鎖されたガザの住民のニーズを満たすには程遠いと指摘する。

イスラエルのネタニヤフ首相。(AP通信)
イスラエルのネタニヤフ首相。(AP通信)

ガザでは空爆も激化しており、20日には少なくとも85人が死亡。避難所として使われていた学校や住宅地が攻撃され、犠牲者の多くは女性や子どもだった。21日の空襲では82人が死亡し、その中には生後わずか1週間の赤ちゃんも含まれていた。

またネタニヤフ首相は22日、ガザへの新たな地上作戦終了後、ガザ全域を「イスラエルの安全管理下」に置くと宣言。終戦の条件として「パレスチナ側の完全な武装解除」と「トランプ計画の完全な活用」を挙げた。

さらにイスラエル軍は21日、31カ国の外交官らが参加する視察団に対し「警告射撃」を行ったことを認めた。この視察団はヨルダン川西岸で人道状況を調査していたもので、イスラエル軍は「承認されたルートから外れた」と説明している。

国連のグテーレス事務総長をはじめ、フランス、オランダ、トルコ、ドイツ、ポルトガル、スペインなど複数国がこの発砲を非難。イギリスやフランスなど欧州各国はイスラエル大使を呼び出し、説明を求める姿勢を示している。

​編集:田中佳奈