英誌『エコノミスト』は最近、「台湾を巡る超大国の危機が迫っている」と題する記事を掲載し、台湾が危機に陥る3つの要因を指摘した。その中には、台湾政府の政治的機能不全が中国の「グレーゾーン戦術」の格好の標的となり、賴清德総統の対中強硬姿勢が社会の分断をさらに深刻化させ、中国に付け入る隙を与えていることが含まれている。これを受け、元立法委員の郭正亮氏はインターネット番組『亮話天下』で、関税戦争により米国が世界の注目を集め、関税の影響を受けた他国は自国の対応に手一杯で台湾に関心を払えない状況にあると指摘した。一方、中国はWTOを通じて友好国を増やし続けており、台湾の立場はますます危ういと警鐘を鳴らした。
郭氏によれば、関税戦争は米国を焦点とする一方で、台湾は内部対立に陥り、賴総統の対中強硬策、罷免や司法問題が政界の分裂を深め、これにより中国が「今こそ行動の好機」と判断する可能性があるという。郭氏は、従来は2027年以降に両岸戦争リスクが高まると予測されていたが、現状ではそのタイミングが前倒しになる恐れがあると指摘した。
一方、財訊メディアの謝金河会長は以前、フェイスブックで『エコノミスト』が台湾海峡の戦争を繰り返し煽っていると批判、「極めて不当だ」と投稿した。しかし郭氏はこれに対し、「謝氏の指摘は見当違いだ」と反論し、『エコノミスト』は分析を行っているのであって、武力統一を支持しているわけではなく、むしろ反中メディアとして有名であり、今回の記事は「台湾放棄論」ではなく「台湾憂慮論」だと強調。独立派がこれを否定するのは誤りだと述べた。
さらに郭氏は、関税戦争によってかつて米国の同盟国だった国々が対立関係に転じる一方、中国は友好国を増やし続けているとし、台湾の立場はますます脆弱になっていると分析。2019年に「終了した」と見なされていた中欧投資協定が、いまや復活の可能性を模索しており、日中韓貿易協定の再開も議論されていると指摘した。また、民進党は台湾の政治的現実に向き合う勇気がないと批判し、賴総統が謝会長と同様に危機を見落とし、「今こそ台湾の好機」と誤解しているのではないかと懸念を表明した。
郭氏は最後に、台湾民意基金会の游盈隆会長でさえ「両岸戦争は現在起こらない」と考えていると述べ、賴総統もまた米中が関税交渉で忙殺されている間に台湾の好機が訪れると誤信しかねないと警告。「台湾が直面するプレッシャーは前例のないものになるだろう」と述べた。また、米インド太平洋軍のパパロ司令官が「米国が中国を打ち負かす能力は低下しつつある」と警告していることにも言及した。
編集:梅木奈実 (関連記事: トランプ氏「米国と取引できず中国経済は今ひどい」 中国側と「適切な時期に会談」 | 関連記事をもっと読む )
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