歴史新ニュース》楽園から地獄へ──カシミール、印パ戦争の舞台と南アジア火薬庫の歴史的背景に迫る

2025-05-07 17:00
インド側カシミールはしばしば緊張状態に陥る。写真はインド軍がまるで誰もいない街頭を巡回している様子である。(資料写真、AP通信)
インド側カシミールはしばしば緊張状態に陥る。写真はインド軍がまるで誰もいない街頭を巡回している様子である。(資料写真、AP通信)
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なぜこの記事を振り返るのか

カシミール地方で観光客を標的にした致命的な攻撃事件が発生し、少なくとも26人が死亡した。この事件はインド国内で激しい怒りを呼び起こし、ニューデリーが長年イスラマバードに対して主張してきた「パキスタンによるカシミール地域でのテロ活動支援」という非難が改めて再燃する形となった。これを受け、パキスタンのハワジャ・ムハンマド・アシフ国防相(Khawaja Muhammad Asif)は4月28日、インドがパキスタンへの攻撃を準備している可能性があると表明し、パキスタン側はすでに軍備を強化し、高度な警戒態勢に入ったと強調した。

インドとパキスタンは1993年にもカシミール問題をめぐって対立した経緯がある。当時の報道を振り返ると、インドがパキスタンによるカシミールでのテロ活動支援を非難してきたのは、すでに長い歴史があることがわかる。カシミールは湖や山々に囲まれた風光明媚なリゾート地として知られるが、高地に位置し、交通の便が極めて悪く、人口も少ない。この地域をめぐるインドとパキスタンの長年の対立は、経済的利益が主因ではないと考えられている。

印パが1990年代に衝突した際、『新新聞』創設者の南方朔氏は、なぜ両国がカシミールをめぐってたびたび衝突するのかを解説する記事を執筆した。その記事は30年経った今でも、カシミールが「南アジアの火薬庫」と呼ばれるに至った背景を理解するための貴重な資料となっている。(新新聞編集部)

南アジア亜大陸のヒマラヤ山脈の麓にはかつて「楽園」と呼ばれた場所が存在した。しかし、人類の野蛮さと堕落によって、その楽園はすでに地獄へと変貌し、今なお奈落の底へと落ち続けている。

ここはインド、パキスタン、中国の国境が交わるカシミールだ。今日「カシミールウール」として知られる毛織物の名称はここに由来し、「美しい」という意味を持つ。その名の通り、この地で作られる女性用のスカーフやカーペットは非常に精巧で美しい。

美しき楽園の終焉

カシミールはとりわけ古代の湖盆地に形成された渓谷が絶景で、人間界の楽園とも称された。16世紀、イスラムの英雄アクバルがこの地を征服し、ムガル帝国の版図に組み込んでから、丹念に整備され、南アジアの庭園として栄えた。盆地にはヒマワリよりも大きなバラが咲き乱れ、ダル湖とニゲン湖は四季折々の美しさを誇り、シルクロード最大の景勝地として知られた。英国統治時代には植民地官僚やインド各地の藩王たちの避暑地として愛され、1980年代まで毎年60万人の観光客が訪れ、湖には1200艘のハウスボートが浮かび、欧米の作家たちも創作活動の場として利用した。 (関連記事: トランプ氏「米国と取引できず中国経済は今ひどい」 中国側と「適切な時期に会談」 関連記事をもっと読む

カシミールは約400年にわたり「楽園」の称号を保持し続けた。1756年にアフガニスタンに併合され、1819年にシク王国の侵攻を受け、1846年にインドに編入されるという数度の支配交代があったが、その地位は揺らがなかった。カシミールの伝承によれば、聖書のモーセがこの地に住み、イエス・キリストは十字架で処刑されずカシミールに逃れ、80歳まで生き、その墓はスリナガルにあるとされる。また、イスラム教の預言者ムハンマドもこの地を訪れたとされ、当地の最重要聖地「ハズラトバル廟」には彼のひげが保管されている。

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