台湾発「フォルモサ債」発行減少、米住宅ローン市場に影響か 英FTが警鐘

中央銀行。(柯承惠撮影)

英紙『フィナンシャル・タイムズ(FT)』は6日、台湾ドル為替相場が最近安定しているものの、台湾の生命保険会社が最近急速に進めている米ドル建てヘッジが遅すぎたのではないかという市場の懸念が依然として残っていると報じた。JPモルガンのアナリストは、台湾の保険業界が今回の台湾ドル高の主な被害者になる可能性があると警告した。

『フィナンシャル・タイムズ』によれば台湾の生命保険会社と米国の住宅ローン市場の間には「奇妙な金融ダンス」とも呼べる関係があり、その中心にあるのが「フォルモサ債」である。フォルモサ債(Formosa bonds)とは、外国企業が台湾で発行する米ドル建ての債券で、実質的には台湾の保険会社が市場に「米国の金利ボラティリティを売る」ことであり、米国の住宅ローン金利を一定程度押し下げる効果もある。

米連邦準備制度理事会(FRB)が2022年に利上げを開始して以降、フォルモサ債の発行は大幅に減少したものの、依然として発行残高は大きく、最近の市場の動揺が米国の金融市場に波及するのではないかとの懸念もある。しかし、バークレイズのアナリストはその可能性は低いと見ている。

バークレイズは、最も懸念されるのは台湾の保険会社が大量のコール可能債(償還可能債券)を手放すことで、市場がボラティリティを買い漁る事態だとしつつ、実際にはそのシナリオは起きにくいと指摘。為替リスクへの対応として保険会社はまずヘッジを行い、慌てて長期コール可能債を売却することは考えにくいという。また、台湾中央銀行には為替安定のための手段があり、これらの動きが米ドル金利のボラティリティに与える影響は限定的だと説明する。

さらに重要なのは、長期コール可能債が米国のボラティリティ市場の重要な供給源であるとはいえ、その為替リスクは台湾の保険会社が保有するその他の外貨資産に比べれば相対的に限定的だという点だ。

米国の金利デリバティブ商品の価格動向を見ても、現時点では台湾の保険会社が大規模に市場から撤退する兆候は見られない。ただし、バークレイズはフォルモサ債の発行見通しは暗く、長期的には米国債市場に影響を与える可能性があると分析。市場がフォルモサ債の再活況を期待しなくなるにつれ、米国の金利ボラティリティが再評価され、将来的に米国の住宅ローンコストがやや上昇する恐れがある

つまり、市場が懸念するのは、コール可能債が大量に市場に戻った場合、長期のボラティリティが低下することだ。しかしアナリストは、もし大幅な利下げが行われれば逆にボラティリティが高まるため、このリスクは現時点では低いとみている。現状では、台湾の保険会社は今後、米ドル資産への投資において流動性の低い長期コール可能債に対して慎重になるだろう。特に米国が外国人投資家に関税を課し、米ドル資産の需要が低下する環境では、長期ボラティリティが供給ショックで急落するリスクはさらに低下するとみられる。

また、市場が大幅な利下げを織り込む場合、ボラティリティの供給が戻り、それが長期オプションのボラティリティの偏りを明確にしてきた理由でもある。しかし、この可能性が低下すれば、長期ボラティリティの偏りも次第に均衡が取れる方向に向かうだろう。 (関連記事: 「中国ファン」の信仰が崩壊?ドイツの経済学者:中国の実態は外部の想像よりはるかに悪い 関連記事をもっと読む

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編集:梅木奈実

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