ウクライナのゼレンスキー大統領は18日、欧州各国首脳や欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)の指導者らとともにホワイトハウスを訪れ、トランプ米大統領と会談した。
ゼレンスキー氏はいつもの軍装ではなく濃色のスーツ姿で西棟入り口に姿を見せ、トランプ氏から温かく出迎えを受けた。かつてのように公の場で侮辱されることはなかったが、閉ざされた協議の場では、領土の割譲と引き換えに米国からあいまいな安全保障の約束を得るのか、それとも立場を貫きトランプ氏を再び怒らせるリスクを冒すのか、難しい選択を迫られることになった。
今回の会談は、トランプ氏が先週アラスカでロシアのプーチン大統領と首脳会談を行った直後に設定されたものだ。アラスカ会談でプーチン氏は停戦要求を拒否し、代わりにウクライナ東部の領土割譲を条件に、他戦線での攻勢停止を提示したとされる。ゼレンスキー氏とトランプ氏の今回のやり取りは、2月のオーバルオフィスでの緊迫した会談とは対照的だった。当時はトランプ氏とバンス副大統領がライブ配信を通じてゼレンスキー氏を「恩知らず」と非難し、トランプ氏が「交渉カードを何も持っていない」と侮辱する場面もあった。
18日の会談では雰囲気が一変した。ゼレンスキー氏は保守系メディア「リアル・アメリカズ・ボイス」の記者ブライアン・グレン氏と冗談を交わす場面もあった。グレン氏は前回の訪問時に「なぜスーツを着ないのか」と問い詰めていたが、今回は「そのスーツ姿は素敵だ」と称賛し、前回のやり取りをわびた。ゼレンスキー氏は「あなたは同じスーツを着ている。私は変えたのに、あなたは変えていない」と冗談めかして返し、トランプ氏をはじめ場内の笑いを誘った。

今回、副大統領ヴァンス氏は終始沈黙を守り、まるで口止めを受けたかのように一言も発しなかった。二人の米国首脳はいずれも柔和な態度を示し、ゼレンスキー大統領はトランプ氏や記者団と冗談を交わすだけでなく、ウクライナの大統領夫人が米国のファーストレディ宛てにした書簡をトランプ氏に託した。《ニューヨーク・タイムズ》によれば、多国間同盟に懐疑的でありつつノーベル平和賞を強く望むトランプ氏は、米国がウクライナの安全保障を支援し、場合によっては米軍の投入も排除しないと述べながら、その具体的内容は示さなかった。
トランプ氏は「安全保障について言えば、我々は多大な支援を行う。それは素晴らしい支援になるだろう」と語るにとどまった。また欧州を「第一の防衛線」と位置づけ、「彼らは現地にいるからだ。だが我々も支援する。我々も関与する」と述べた。さらにトランプ氏は、自らがプーチン大統領とゼレンスキー氏との三者会談を実現できると強調し、「戦争終結に合理的な可能性がある」と主張した。トランプ氏は同日遅くプーチン氏と再び電話会談を行う予定であることも明らかにした。
英国とフランスは、和平合意が成立した場合、ウクライナ西部に軍を派遣し「予備部隊」として展開する用意があると表明している。軍事アナリストは《ウォール・ストリート・ジャーナル》に対し、米国が必ずしも地上部隊を投入するとは限らないが、欧州軍への米製防空システムの供与、無人機派遣、軍事情報の提供、欧州軍と装備の輸送支援といった間接的な形で関与する可能性があると指摘した。トランプ氏の特使スティーブ・ウィトコフ氏は、ウクライナに対する「集団防衛」に類する安全保障はNATOではなく各国が提供すべきだと述べ、この発言はウクライナのNATO加盟に反対するモスクワの要求に沿うものだとみられている。
