8月20日から22日に横浜市で開催される第9回アフリカ開発会議(TICAD9)を前に、アフリカ現代政治を専門とする遠藤貢・東京大学大学院総合文化研究科教授が4日、日本記者クラブで記者会見を行い、アフリカの現状や課題、主要国との関係、そして日本が取るべきアプローチについて詳しく語った。司会はNHK解説委員で日本記者クラブ企画委員の出川展恒氏が務めた。
遠藤氏は、アフリカを巡る関心の高まりと同時に紛争や飢餓などリスク要因が依然として存在する現状を説明。特にサヘル地域では軍事クーデターや武装勢力の活動が相次ぎ、治安の悪化と気候変動の影響による干ばつや飢餓が深刻化していると指摘した。若年層の失業や格差拡大も背景に、人々が欧州へ危険な渡航を試みる事例が増えていると述べた。
また、各国がアフリカと個別に行う「アフリカ・プラスワン型サミット」の乱立状況を示し、中国、米国、ロシア、UAEなどの動向を分析。中国は大規模な投資と外交攻勢を続け、米国は鉱物資源確保や輸送網整備に注力している一方、USAIDの解体などで人道・保健支援が後退しているとした。ロシアはワグネルの活動をアフリカンコープスへ再編し軍事的影響力を維持しつつも、今後は縮小の可能性もあると述べた。さらにUAEは脱炭素戦略の一環として鉱物資源や港湾開発に積極投資しており、存在感を急速に高めていると説明した。
日本の関与については、TICADの多国間枠組みとしての安定性を強調しつつ、「リスクのみを見て関与をためらうことは長期的なリスクになり得る」と指摘。食料安全保障や気候変動への適応、若者支援、保健衛生分野での協力強化の必要性を訴えた。製造業育成の難しさや現地スタートアップ支援の重要性にも触れ、「地道な取り組みを通じて信頼を積み重ねることが、日本とアフリカの持続的な関係構築につながる」と結んだ。
質疑応答では、サヘル3カ国のロシア接近は反仏感情とロシアの情報戦が背景にあるとの見解や、アフリカ人口増加による国際的影響、USAID撤退の深刻な影響、トルコの進出動機など多岐にわたる質問に応じた。遠藤氏は「TICADは一足飛びではなく、歩みを重ねて信頼を築く場」として今後の意義を強調した。
編集:柄澤南 (関連記事: 第9回アフリカ開発会議(TICAD9)、8月20日から横浜で開催 日ア共創の新時代へ | 関連記事をもっと読む )
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