台湾・国民党主席選の舞台裏で波乱 有力台中市長が不出馬、反朱立倫派は徹底抗戦

2025-08-15 15:18
台中市長の盧秀燕が国民党主席選への不出馬を決断し、反朱派を驚かせた。(写真/陳品佑撮影)
台中市長の盧秀燕が国民党主席選への不出馬を決断し、反朱派を驚かせた。(写真/陳品佑撮影)
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台湾の国民党は7月26日の全国初の大規模リコール投票で24対0の圧勝を収めたが、喜びも束の間、党主席選挙を巡る混乱に突入した。党主席の朱立倫氏は当初、この日に引退の意向を表明する予定だったが、予想外の全勝により発言を控え、「反朱派」の警戒を招いた。

朱氏は7月30日の中常会で、8月23日の第2波リコール投票後に引退する考えを示したものの、盟友である国民党の傅崐萁氏や中常委の陳俗蓉氏がリコール後に党内を訪問したことから、朱氏がまだ諦めていないとの見方が広がった。一方、反朱派の中心人物で「CK楊」と呼ばれる楊建綱氏は、台中市長の盧秀燕氏を推し、朱氏の動向はもはや重要ではないとの立場を取った。

20250802-国民党主席朱立倫(中)2日出席羅明才「反惡罷,戦独裁 」後援会成立大会。(顔麟宇撮影)
国民党は解職請求で全勝し、朱立倫氏(中央)は予定通りの退任表明を見送った。(写真/顔麟宇撮影)

CK楊と朱立倫氏の蜜月と決裂

楊氏は軍出身でテクノロジー業界にも関わり、特に台北市の深い藍派で強い影響力を持つ。洪秀柱氏や呉敦義氏の時代から党内で活動してきたが、個性的な性格から幹部との意見衝突も多かった。江啟臣氏が主席を務めた時期は協力せず、朱氏を支援。これが朱氏の江氏打倒の一因となった。

しかし2022年、桃園市長候補の選定で亀裂が生じた。議長の邱奕勝氏が不出馬を決めた後、楊氏は立法委員の呂玉玲氏を推したが、朱氏は前行政院長の張善政氏を指名。これが対立を深め、最終的に楊氏は盧氏支持へと舵を切った。

20250708-立法院副院長江啟臣(写真)8日、「ヨーロッパ重要価値パートナープログラム」(EVIP)国会幕僚メンバーを接見。(柯承惠撮影)
CK楊は朱立倫を支援し、江啟臣(写真)を破る原動力となった。(写真/柯承惠撮影)

盧秀燕氏出馬を巡る駆け引き

2024年の総統選で国民党は政権奪還に失敗したものの、国会で最大勢力となり、不分区1位の韓国瑜氏が立法院長に就任。朱氏は党内危機を乗り越えたが、その背景には盧氏の支援があった。しかし、反朱派の工作で盧氏の姿勢は揺れ、日経新聞の取材に「検討中」「まだ決まっていない」と述べるにとどまった。

大規模リコール期間中、国民党は31議席を失い、民進党はゼロ。党勢の失速で朱氏の地位は低下。反朱派の楊氏は地方組織や議会人脈を糾合し、盧氏擁立を進めたが、盧氏は明確な意思表示を避け、推進派の思惑を測りかねる状況が続いた。

20250621-北北基反惡罷団結大会21日に栄星花園で開催、写真は台中市長盧秀燕。(劉偉宏撮影)
大規模リコールの最中、国民党は主導権を失い、盧秀燕への圧力が強まった。(写真/劉偉宏撮影)

王金平氏の示唆と情報リーク

7月26日の圧勝時、盧氏は反朱派に不出馬の意向を伝え、前立法院長の王金平氏も同様の見方を示した。しかし、反朱派は動揺を抑えられず、楊氏らはなおも出馬を促した。盧氏は代理候補を含む調整を示唆したものの、8月11日の聯合報は盧氏不出馬を報道。

党内では盧氏側からのリークとみられた。当初は8月23日の投票前には明言せず、翌24〜25日に発表する計画だったとされる。

20250725-国民党凯道で「不同意解職」選前の夜を開催。(陳品佑撮影)
726の大勝時、盧秀燕は反朱連合に不参加の意思を示した。写真は国民党支持者。(写真/陳品佑撮影)

反朱派は候補擁立を断念せず

報道で早期に情報が出たことは反朱派にとって衝撃だった。盧氏の不出馬が公式発表されない限り希望は残るとしつつも、現実を直視せざるを得なくなった。前立法委員の鄭麗文氏が立候補の可能性をほのめかすなど、情勢は流動的だ。

反朱派が存続する限り、国民党主席選は注目の舞台であり、彼らは必ず対抗馬を立て、朱氏との決着を目指す構えだ。

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編集:田中佳奈 

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