台湾の国民党は7月26日の全国初の大規模リコール投票で24対0の圧勝を収めたが、喜びも束の間、党主席選挙を巡る混乱に突入した。党主席の朱立倫氏は当初、この日に引退の意向を表明する予定だったが、予想外の全勝により発言を控え、「反朱派」の警戒を招いた。
朱氏は7月30日の中常会で、8月23日の第2波リコール投票後に引退する考えを示したものの、盟友である国民党の傅崐萁氏や中常委の陳俗蓉氏がリコール後に党内を訪問したことから、朱氏がまだ諦めていないとの見方が広がった。一方、反朱派の中心人物で「CK楊」と呼ばれる楊建綱氏は、台中市長の盧秀燕氏を推し、朱氏の動向はもはや重要ではないとの立場を取った。

CK楊と朱立倫氏の蜜月と決裂
楊氏は軍出身でテクノロジー業界にも関わり、特に台北市の深い藍派で強い影響力を持つ。洪秀柱氏や呉敦義氏の時代から党内で活動してきたが、個性的な性格から幹部との意見衝突も多かった。江啟臣氏が主席を務めた時期は協力せず、朱氏を支援。これが朱氏の江氏打倒の一因となった。
しかし2022年、桃園市長候補の選定で亀裂が生じた。議長の邱奕勝氏が不出馬を決めた後、楊氏は立法委員の呂玉玲氏を推したが、朱氏は前行政院長の張善政氏を指名。これが対立を深め、最終的に楊氏は盧氏支持へと舵を切った。

盧秀燕氏出馬を巡る駆け引き
2024年の総統選で国民党は政権奪還に失敗したものの、国会で最大勢力となり、不分区1位の韓国瑜氏が立法院長に就任。朱氏は党内危機を乗り越えたが、その背景には盧氏の支援があった。しかし、反朱派の工作で盧氏の姿勢は揺れ、日経新聞の取材に「検討中」「まだ決まっていない」と述べるにとどまった。
大規模リコール期間中、国民党は31議席を失い、民進党はゼロ。党勢の失速で朱氏の地位は低下。反朱派の楊氏は地方組織や議会人脈を糾合し、盧氏擁立を進めたが、盧氏は明確な意思表示を避け、推進派の思惑を測りかねる状況が続いた。

王金平氏の示唆と情報リーク
7月26日の圧勝時、盧氏は反朱派に不出馬の意向を伝え、前立法院長の王金平氏も同様の見方を示した。しかし、反朱派は動揺を抑えられず、楊氏らはなおも出馬を促した。盧氏は代理候補を含む調整を示唆したものの、8月11日の聯合報は盧氏不出馬を報道。
党内では盧氏側からのリークとみられた。当初は8月23日の投票前には明言せず、翌24〜25日に発表する計画だったとされる。

反朱派は候補擁立を断念せず
報道で早期に情報が出たことは反朱派にとって衝撃だった。盧氏の不出馬が公式発表されない限り希望は残るとしつつも、現実を直視せざるを得なくなった。前立法委員の鄭麗文氏が立候補の可能性をほのめかすなど、情勢は流動的だ。
反朱派が存続する限り、国民党主席選は注目の舞台であり、彼らは必ず対抗馬を立て、朱氏との決着を目指す構えだ。
台湾ニュースをもっと深く⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp (関連記事: 親台派日本紙が賴清德氏を批判 大規模リコール「与党掌握」の予測外れる | 関連記事をもっと読む )