特集》台湾・台中市長 盧秀燕氏が支えた若手3人 リコールの荒波を乗り越え大統領選への布石に

2025-07-26 21:06
盧秀燕氏の強力な後押しを受け、門下生の黃健豪氏(右二)、廖偉翔氏(右三)、羅廷瑋氏(右四)がリコールを乗り越えた。(写真/柯承惠撮影)
盧秀燕氏の強力な後押しを受け、門下生の黃健豪氏(右二)、廖偉翔氏(右三)、羅廷瑋氏(右四)がリコールを乗り越えた。(写真/柯承惠撮影)
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7月26日に行われた大規模リコール投票の結果、国民党所属の立法委員である羅廷瑋氏、廖偉翔氏、黄健豪氏は、台中市長・盧秀燕の直弟子として知られる3人で、全員がリコールの危機を乗り越え議席を守り抜いた。

3人の「盧ママの子どもたち」は、選挙戦初期には「支持者からもリコール賛成の声が多い」というプレッシャーにさらされていたが、国民党の組織的な動員、国民党と民衆党の協力、そして盧秀燕氏による「母鶏がヒナを率いる」戦略によって、最終的に流れを逆転させ、リコールの波を退けた。

20250621-北北基反惡罷團結大會21日於榮星花園登場,圖為台中市長盧秀燕。(劉偉宏攝)
台中市長・盧秀燕氏は、台中リコール選戦の大きな鍵を握る存在となった。(写真/劉偉宏撮影)

台湾の揺れ動く州 盧秀燕氏の「訓練生」たちが警戒を鳴らす

台中市は全国で2番目に人口が多い都市で、都市部と農村部が混在する構造を持ち、選挙区も多様で競争が激しい。市内の11の立法委員選挙区は国民党と民進党の勢力がほぼ拮抗し、わずかな風向きや中央政府の動きが結果を左右する、いわば「全国の風向きが映る地域」とされている。

特に廖偉翔氏と羅廷瑋の選挙区は、台中市の中でも人口密集地で、若年層や中産階級が多く、過去の選挙では「風向き投票」の傾向が強く見られた。民意が少し揺らぐだけで情勢が変わるため、国民党は2024年の立法委員選挙で勝利した後も神経を尖らせていた。ここで議席を失えば、単なる議席数減にとどまらず、2026年の市長選や台中の政権基盤そのものを揺るがしかねない。盧秀燕にとっても、自身の政治的未来を左右する重要な戦場だった。

と廖は2024年初頭に当選したばかりで、まだ地元の基盤が固まっていなかった。リコールが提起されたきっかけは、国会開会後、彼らが賛同したいくつかの法案だった。

は「防災法」改正案に署名し、「集会の自由を制限する」との批判を受け、民間団体から「言論の自由を抑圧する立法委員」として名指しされた。

一方、廖は「立法院職権行使法」修正案を支持し、国会軽視への罰則強化を主張したことで、「メディアを萎縮させる」「ネット映え狙いの議員」「実務を欠いた若手」といったレッテルを貼られた。

こうした状況で、廖と羅はリコールの矢面に立たされ、やがてリコールは党派を巻き込む大規模な動員戦に発展した。国民党は「これは単なる2議席の問題ではない」と判断し、野党陣営の結束を示すために国民党・民衆党連携を進め、盧秀燕が「母鶏」となって候補を引っ張る戦略で巻き返しを図った。その結果、「盧ママの子どもたち」はリコールを退け、盧にとっても2028年大統領選を見据えた政治資産の再構築に成功する重要な一歩となった。 (関連記事: 台湾「7・26リコール投票」反対多数で否決へ 全選挙区で罷免不成立の見通し、結果一覧はこちら! 関連記事をもっと読む

20241119-立委廖偉翔19日在立法院質詢。(柯承惠攝)
廖偉翔氏(写真)と羅廷瑋氏は、それぞれ国会での活動中にリコールの「突破口」となる動きを見せた。(写真/柯承惠撮影)

盧秀燕氏は傍観者ではない 「盧ママの三子」を守り抜く

羅廷瑋氏と盧秀燕氏の関係に目を向けると、両者は台中市の国民党陣営の主流派に属し、かつて市政と議会の連携を通じて強固な信頼関係を築いてきた。彼は盧氏の市政チーム外においても最も安定した政治的盟友のひとりであり、2024年の選挙戦では盧氏自ら選挙区の動員と資源の調整を後押しし、羅氏の当選を後押しした。一方、廖偉翔氏は中央政治と産業界の背景を持つ新世代の「空降型」候補で、2022年の市長選の際に盧氏の全面支援を受けて地元で紹介され、「盧系の若手戦士」「盧ママの三子」の一人と位置づけられた。

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