台湾政界を揺るがした大規模リコール、その第1段階が7月26日に幕を下ろした。民進党陣営とリコール賛成派が標的にした花蓮の立法委員、国民党の傅崐萁氏は、最終的にリコールを免れた。この結果に国民党陣営内部では「予想通り」との声が多い。傅氏は長年にわたる地元での実績と強固な支持基盤を持ち、さらにリコール賛成派や民進党陣営が推進した「反傅陣営」が結束できなかったことが決定的だった。一方で、傅氏は今後も司法案件への対応を迫られる見通しだ。
今回、勢いを増したリコールの波に乗じて、国民党内部からも傅氏への批判が相次いだ。傅氏は国会改革四法や花東三法をはじめ、大幅な予算削減を強く主導し、民進党陣営を刺激してきた。また、立法委員団を率いて中国を訪れ、その行程の一部を隠して香港に立ち寄ったことも、リコールを後押しする火種になったとみられている。
傅崐萁氏を揺さぶるには 反傅勢力の結集が鍵
花蓮県の政治構造は特殊で、国民党陣営または国民党寄りの無所属勢力が3分の2を占め、傅氏はその基盤をがっちりと握っている。残りの3分の1は民進党陣営の基盤で、民進党がリコールで25%の投票閾値を超えるには、国民党陣営から一定の票を取り込む必要がある。しかし、この勢力は傅氏の影響下にはないと指摘される。
地元では、花蓮市議会議長の張峻氏と、花蓮市を実質的に支配する魏家という二大勢力が傅氏と対立。さらに、前県長謝深山氏や元立法委員王廷升氏の家族とも不和が伝えられている。
このため、民進党陣営や政治番組では傅氏の個人的な行動がしばしば議題に上るものの、実際に花蓮の権力を揺るがすには、反傅勢力が一致団結することが不可欠だ。張峻氏は署名集めの段階で、国民党内部の制止を振り切って反傅陣営に立ち、民進党陣営やリコール賛成派を奮い立たせた。ただし議長選は間接選挙であり、張氏の政治力は大きいものの、実際にどれだけの支持を動かせるかには疑問が残る。

花蓮の魏家は中立を維持 民進党は決定的な支援を得られず
もう一つ、民進党陣営とリコール賛成派が期待を寄せた魏家は、花蓮市で長く影響力を持つ。2022年の選挙では、無所属の兄・魏嘉賢氏が市長から議員へ転身し、国民党籍の弟・魏家彦氏が市長選に勝利、さらに魏鈺晟氏も無所属で市代に当選した。2018年の市長選で魏嘉賢氏は3.8万票、得票率78%を記録し、その地盤の強さを示した。
魏家は明確な立場を示さず、傅氏を支持するのか否かについて憶測が飛び交った。『風傳媒』によれば、魏嘉賢氏は県知事選を視野に入れ、傅氏と一度会談したが、最終的に合意には至らなかったという。民進党も秘書長の林右昌氏を通じて魏家と接触し、メディア大手も同席したが、魏家は援助を拒否。2024年の立法委員選で民進党が約束を果たさなかった経緯を考慮したためとみられる。
結局、魏家は中立を貫き、民進党陣営やリコール派が場所を借りる際も規定に従い、国民党の活動も同様に扱われた。結果的に反傅勢力はまとまりきれず、リコール終盤には元副市長の夫人の自殺や南部の台風被害の影響も重なり、民進党陣営の勢いは鈍化。最終的に傅氏はリコールの圧力を耐え抜き、花蓮の座を守り抜いた。

リコールを乗り越えた傅崐萁氏 次に待つのは後継問題と司法問題
とはいえ、国民党内や地元花蓮では、大規模リコールを突破した後も、立法院での実績や司法問題が傅氏の評価を揺るがし続けていると見る向きが強い。今後の課題は二つ。ひとつは、後継者と目される吉安郷長・游淑貞氏が、傅氏の影響力が一部低下するなかで2026年の県長選に挑み、魏家の攻勢を退けられるかという点。そしてもうひとつは、傅氏や花蓮県政府を巡る司法案件で、過去に終結したはずの案件が再調査され、個人的な鉱石税の問題も含めて対処を迫られる可能性があることだ。
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