評論:台湾・大規模リコールが導いた「たった一つの結末」──分断と疲弊の1年

2025-07-24 12:30
和碩董事長の童子賢氏、花蓮県議会議長の張峻氏が街頭活動を行い、国民党総召集人傅崐萁氏のリコールを力強く支援している。(写真/張峻議長事務所提供)
和碩董事長の童子賢氏、花蓮県議会議長の張峻氏が街頭活動を行い、国民党総召集人傅崐萁氏のリコールを力強く支援している。(写真/張峻議長事務所提供)
目次

台湾は一年を無駄にした。賴清德総統は責任を認めないだろうが、認めざるを得ない。民進党の国会総召である柯建銘氏が公然と宣言したからだ。「この一年余り、私は一つのことだけをやってきた。国家を生死存亡の危機から救い出すため、大規模リコール運動を信仰のように貫いてきた…」。賴清德は柯建銘氏の執念を放置し、最後の瞬間、中常会を主宰して動員令を発した。その前に「百工百業挺罷免」が一夜にして連携投稿を行い、中央キッチンの影が再現した。総統は「老柯の操り人形」から一歩ずつこの茶番劇の発動機となった。

「百工百業」は賴清德後援会の代表号である

ちょうど2年前の今ごろ、最初の「各業界による頼清徳支持後援会」が発足した。「各業界(百工百業)」は頼清徳氏の動員ネットワークの基盤であり、そのまま自然な形でリコール運動にも転用された。この1年あまりで「青い鳥(青鳥)」の姿を借り、驚くべきスピードで広がっていった。ネット上での動員力は現実の動きよりもはるかに大きく、大規模な集会を開かずとも、同時多発的に投稿や話題の拡散が可能だった。これはもともと蔡英文氏の得意技だったが、今では頼清徳氏にとって最も有効な武器となっている。

一方、現実世界で進めていた「国家団結10講」は途中で頓挫したが、それでもネット上での「大規模リコール運動」の攻勢にはまったく影響がなかった。SNS上では、罷免に熱狂する支持者の盛り上がりは、街頭で相手を罵倒したり、罷免対象の人物に唾を吐きかけるような群衆の激情に匹敵するほどだった。

「百業百業が声を上げる競争」のなかで、特に注目を集めたのは2つの動きだった。ひとつは「流通の父」と称される徐重仁氏がフェイスブックに投稿した支持表明、もうひとつは和碩(ペガトロン)董事長の童子賢氏が地元・花蓮に戻り、自ら街頭に立ってリコール運動を支援したことだ。財界の重鎮2人の表明がリコール運動にどれほどの実効性をもたらしたかはまだ不明だが、その波紋はすでに小さくない。

徐氏は「野党が数の力を背景に、手続き的正義や社会的合意を顧みず、政権の政策遂行を妨げ、社会全体の安定を揺るがしている」とし、一部の野党勢力について「中国と曖昧、あるいは親密な関係を保ち、台湾の主権や民主制度への尊重が薄い」と指摘した。その表現は婉曲ではあるものの、民進党が野党を「親中」と非難する主張を補強する内容となっている。だが皮肉にも、この2人の「主張の核心」は、いずれも論点を見誤っている。

民主とは「与党への服従」政治ではない

第一に、民主政治とは「野党が与党の言いなりになる政治」ではない。この1年で政府の政策が停滞した原因は野党ではなく、むしろ与党にある。というのも、与党は心血を注いで「大規模リコール運動を信仰のように行うこと」に没頭し、真剣に政務に取り組むことよりも、街頭で騒ぎ立てることを優先してきたからだ。

台湾人は記憶力が良いとは言えず、たとえばわずか半月ほど前、中型台風「ダナス」が嘉南地方に大きな被害をもたらしたが、電力やインターネットの復旧はいまだ不安定で、17日経っても断続的なままだ。復旧の見通しすら立たないというのは、これまでに例がない。総統が現地を視察しても、何一つ事態は改善されなかった。

最新ニュース
核施設攻撃後、イランで愛国意識が高まる NYタイムズ報道:禁じられた歌と神話で民族主義を強化
トランプは台湾を「切り札」にするのか 新チューリヒ紙が警告「対中戦略なき混乱」
呉典蓉コラム:台湾総統・頼清徳の大博打 わずか8.7%の有権者がその未来を左右
独占インタビュー2》中国の上陸戦力が予想以上の拡大 元海上幕僚長・武居智久氏「日米台はキルチェーン強化が急務」
独占インタビュー1》台湾海峡防衛に「断線」リスク 元海上幕僚長・武居智久氏が日米台の新協力案を提言
AI医療》台湾・長庚病院、AIで骨折診断に革命 X線1枚で全身の損傷を高精度判別
台湾で前例なき「大規模リコール」実施へ 米国の「沈黙」が民進党に追い風?野党幹部「リコールは楽観できない」
【オールスター2025第1戦】頓宮が3ランでMVP!全パが5-1で快勝 京セラドームが熱狂の渦に
日本が米国車輸入を全面開放へ 自動車株が急騰した背景と台湾市場への波紋
ポピュリズムの嵐、日本で本格化!若者層が極右派に支持集結、自民党の揺らぐ政治基盤
バングラデシュで中国製戦闘機が墜落 学校に衝突し児童含む31人死亡
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』公開記念 限定Happyくじが7月25日発売へ
「単位と引き換えに」採血強要事件 台湾師範大学女子サッカー部コーチ、生涯追放処分
中国人観光客罵倒や鹿殴打で炎上の過去 元「迷惑系」へずまりゅう氏が奈良市議に当選
石破首相、辞任報道を強く否定 会談後に続投を表明、「政治空白は避けるべき」
「台湾有事は日本有事」―元海上幕僚長・武居智久氏、海上交通の脆弱性を警告 日台のSLOC共同防衛を提言
全国の職人とクリエイターが集う「HandMade in Japan Festival」 東京ビッグサイトで開催、手作りの今を体感
舞台裏》台湾医療界トップをめぐる攻防 民進党が台南派を支持へ転換 白い巨塔で国民党・民進党が激突
独占》台湾情報機関トップ人事 台北支部を掌握した副局長候補、接待を控える理由
Metaの8億ドル買収を拒否!「NVIDIAの挑戦者」が初のLG大型受注、韓国スタートアップFuriosaAIとは何者か?
石破首相、「辞任報道は事実無根」と否定 「党分裂あってはならない」と強調
トランプ氏「フィリピンも再び偉大に」 対比19%関税を発表 マルコス政権の対中接近容認
京華城案件》「私はもう7人目のルームメイトと過ごしている」柯文哲氏、検察に反論「あなたたちはネット軍だ」
ミニ四駆の生みの親、タミヤ会長・田宮俊作氏が死去 世界の模型文化を牽引した90年の軌跡
石破茂首相、8月辞任へ 「三巨頭会談」で退陣時期を最終調整か
石破茂氏、就任1年で自民3連敗 石破政権に「党内クーデター」の兆し?
日米が15%関税で合意 石破政権「歓迎」も5500億ドルの代償に懸念
天気予報》台風7号「フランシスコ」発生 沖縄・台湾・ルソン島に影響か 専門家「3台風同時発生の恐れ」
まとめ》日本・比・尼が相次ぎ米国と協定 関税と引き換えに差し出した「譲歩」の実態
「TSMCの1000億ドルは前菜?」 トランプ氏「5500億ドル対日合意」に台湾経済専門家が懸念
トランプ氏「日本と史上最大の取引」発表 15%相互関税と5500億ドル投資の衝撃
台湾の関税より為替が深刻? 専門家「15%でも赤字、為替こそ最大のリスク」
台中メトロブルーライン工事が始動!「黄金十字」ネットワークが山と海、屯区と市街地の交通動脈を結ぶ
台湾フェスタ2025、代々木公園で7月25日から開催 現地グルメ&夜市体験が3日間限定で登場!
台湾に新たな試練?米財務長官が警告 交渉進まずなら「最大40%関税」4月2日の水準に逆戻りも
李忠謙コラム:中国、最先端チップの「最後の1マイル」に挑む 大量備蓄と逆解析、空間で時間を稼ぐ
自民党が歴史的惨敗 垂秀夫元大使「日本は国際社会で周縁化しつつある」と警告
評論:ブラックユーモアと化す民主主義──柯文哲氏「投票通知」が問う台湾の人権と制度の限界
米国は「一つの中国」を承認したのか、それとも認識しただけなのか?『エコノミスト』が読み解く 米中翻訳をめぐる言葉の罠と政治的計算
「ありがとう、ジェンスン・フアン」トランプ氏が公然と称賛 ティム・クックに代わる新たな「ウィスパラー」とは?
自民党、参院選敗北で党内分裂加速 麻生・高市・河野らが石破総裁に退陣要求
台湾海峡で衝突なら中国が「台湾のデジタル生命線」を狙う? 米国が圧力テストを提言
舞台裏》米国だけではない!台湾社会防衛靭性構築 背後にさらに国際的な実力者が暗躍
天気予報》台風連発の恐れ 週末まで雷雨・強風続く 気象専門家が進路予測を公開
「32%関税」報道で揺れる台湾 5割の企業が打撃、23%が生産移転を検討
自民大敗で円急騰 政局不安にロイター「一時的反応」
石破首相「トランプ交渉を継続」表明も退陣圧力 WSJ「自民党70年最大の危機」
張鈞凱コラム:「中華民国」は両岸の処方箋か、それとも毒か?
台南、台風4号被害に日本各地が義援の輪 市長「友情は風雨に負けない」
「台湾南部が“通信孤島”に」台風から2週間経っても復旧せず 断水・停電・通信断絶に政府対応へ批判噴出