米国の関税猶予期限が迫る ベッセント財務長官が警告
米国の関税猶予が間もなく期限を迎えるなか、スコット・ベッセント財務長官は「交渉が進展しなければ、関税は4月2日のピークに戻る可能性がある」と警告した。これは、トランプ政権が各国に譲歩を迫るための圧力をさらに強めていることを示すものだ。ベッセント氏はインタビューで「もし元の税率に戻せば、相手により大きな圧力をかけ、より良い協定を引き出すと考えている」と語った。台湾はこれまで正式な関税通知を受けていないものの、さらなる不安材料となるのは間違いない。
米国は本当に8月1日に関税を発動するのか
CNBCの分析によれば、トランプ政権は今年4月2日に主要貿易相手への最大40%の懲罰的関税を発表したものの、実施時期はこれまで何度も延長されてきた。しかし最近、政府高官たちは「8月1日が厳格な期限」との言い方を繰り返している。ただしベッセント氏は「一部の国との交渉が進めば、再延長もあり得る」とも述べており、あくまで交渉を優位に進めるための圧力であることもにじませた。「我々が求めるのは拙速な合意ではなく、質の高い協定だ」と強調している。
どの国が「標的」となる可能性があるのか
具体的なリストは公開されていないが、インドネシアは通知後の交渉で唯一合意を達成した例だ。5回の交渉を経て、当初32%だった税率を19%まで下げ、一部品目はゼロ関税を勝ち取った。これは米国が示す「成功モデル」とされ、ほかの国が交渉に失敗すれば高関税が復活する可能性がある。
交渉が決裂した場合、どのような経済的影響が生じるか
投資家や輸入業者はこうした動きを神経質に見守っている。最大40%もの関税が実際に復活すれば、米国内需や世界のサプライチェーンに大きな打撃を与えるのは必至だ。ベッセント氏は「交渉は続けるが、時間がないからといって条件を緩めることはしない」とも述べ、譲歩しない姿勢を崩していない。
関税交渉の進展とリスクの主要な時期
以下は直近における米国と貿易パートナーとの交渉および関税動向である。
- 4月2日:トランプ氏が多国に高関税を発表
- 4月から7月:期限を3度延長し交渉を継続
- 7月21日:ベッセント氏が「質は期限より重要」と発言
- 7月21日:ルットニック氏が「8月以降も交渉可能だが、まず税を払う」と発言
- 8月1日:税率を元に戻し、譲歩度合いで調整する予定
発展的考察:トランプ式関税戦略とは何か
トランプ政権がとるのは「まず制裁を打ち出し、その後交渉で条件を詰める」という独特の手法だ。いわゆる「関税レバレッジ」と呼ばれるこの戦略は、先に関税という圧力をかけて市場や経済を揺さぶり、相手から迅速な譲歩を引き出す狙いがある。特に貿易依存度の高い国に有効とされる一方で、市場の混乱や外交の緊張も招くリスクをはらんでいる。
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp (関連記事: 「32%関税」報道で揺れる台湾 5割の企業が打撃、23%が生産移転を検討 | 関連記事をもっと読む )