米大統領トランプ氏のシリコンバレーの盟友が入れ替わっている。ドイツメディア『ハンデルスブラット』は、NVIDIA創設者兼最高経営責任者(CEO)のジェンスン・フアン(黃仁勳)氏が急速に中核的地位に上昇していると指摘した。フアン氏は同社を時価総額4兆ドル突破に導いただけでなく、独特の政治手腕で、ホワイトハウスの政策方向に影響を与え、ワシントンに対中国H20販売禁止令の解除を実現させた。フアン氏は今やワシントンで新世代の「トランプ・ウィスパラー」と呼ばれ、これまで長期にわたってアップルCEOのティム・クック氏が担ってきた役割に取って代わった。
新たな寵愛と過去の関係
「ありがとう、ジェンスン・フアン」。トランプ氏はサウジアラビアの首都リヤドでの盛大な演説で、チップ大手のフアン氏に公然と謝意を示し、続けて意味深長に「クックは今日ここにいないが、君はいる!」と述べた。トランプ氏はさらに熱心に、米国がフアン氏のような企業家を擁していることを誇りに思うと表明した。
この発言はトランプ氏とフアン氏の間で日増しに温度が上がる「兄弟のような絆」を明確に示したが、『ハンデルスブラット』によると、AppleのCEOを務めるクック氏は、その沈着で円滑な外交手腕により、トランプ政権と最も良好なコミュニケーションを取れるテクノロジー界のリーダーと見なされてきた。しかし今やクック氏はトランプ氏から公然と批判される対象となり、フアン氏がホワイトハウスの新たな寵児となった。
この変化は多くのシリコンバレー関係者を驚かせた。電気工学エンジニア出身のこのCEOは、これまで政治界への疎遠さ、さらには軽蔑さえ抱いていることで知られていた。しかし今や彼はそれを楽しみ、ワシントンの政治界の権力ゲームを巧みに渡り歩いている。この変化は驚くべき効果をもたらした。トランプ氏は公の場でフアン氏を「友人」と呼ぶだけでなく、両者は最近、NVIDIAが世界初の時価総額4兆ドル突破企業となったことを共に祝った。
トランプ氏はさらにNVIDIAの成功を自身の政策の成果とし、自身が創設したソーシャルプラットフォーム「Truth Social」で「トランプ関税の実施以来、NVIDIA株は47%上昇した!わが国が戻ってきた」と投稿した。トランプ氏にとって、NVIDIAは既に自身の選挙戦略において、そのリーダーシップの成功を証明する最良の象徴の一つとなっている。 (関連記事: 調査》NVIDIA、台湾政府と気象AIで独占協力 世界初の気象AIで台風予測精度10倍に | 関連記事をもっと読む )
「AI皇帝」の舞台裏の駆け引き:フアン氏はいかにチップ規制を覆したか
フアン氏とトランプ氏の緊密な関係の最も重要な成果は、米政府が先週、NVIDIAの対中国向け高性能AIチップ輸出禁止令を解除したことである。この政策転換はワシントンでのフアン氏のロビー活動の大きな勝利と見なされ、報道と同時にNVIDIA株は再び急騰し、史上最高値を更新した。フアン氏はこの件のため、トランプ氏本人への直接ロビー活動を継続的に行った。彼の核心論点は、米企業による対中国向け高性能チップ輸出の禁止は中国のAI発展を弱体化させることなく、むしろ中国の国産代替品開発を加速させ、中国でのNVIDIAの競合他社を強化し、米企業も重要な中国市場を失うというものだった。