NVIDIA、中国向けAIチップを9月再発売へ 米規制回避モデルで巻き返し狙う

2025-07-11 15:04
2025年5月17日夜、NVIDIAのジェンスン・フアン(黄仁勳)CEOが関連業界のリーダーを招いてディナーを開催し、市民とも和やかに交流した。(写真/顏麟宇撮影)

米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)が、中国市場向けに設計されたAI(人工知能)チップを早ければ9月にも再発売する計画を進めていることが分かった。同社CEOのジェンスン・フアン氏は、直接中国を訪問し、市場への継続的な関与を示す方針だという。英『フィナンシャル・タイムズ』(FT)は関係者の話として、今回の新型チップは既存のBlackwell RTX Pro 6000をベースに、米国の輸出規制を回避できるよう改良されたものであると報じている。

このチップには、先端技術である高帯域幅メモリ(HBM)やNVLinkといった高速データ転送機能は搭載されていない。フアン氏は来週、北京で開催される国際サプライチェーンエキスポにも出席し、中国政府関係者との面会も予定されているとみられる。

NVIDIAは最近、時価総額で初の4兆ドル(約600兆円)超えを達成するなど、世界的な注目を集めているが、AIチップの対中輸出制限に対しては以前から反対の姿勢を示している。チップの供給制限は販売量の減少や株価への影響に直結する可能性があり、CEOの発言や動向に市場の注目が集まっている。

フアン氏は今年5月、台北で開かれたComputexで、アメリカ政府の規制を「失敗だ」と批判し、逆に中国企業の国産AIチップ開発を促していると述べた。NVIDIAの中国AI市場シェアは、4年前の95%から現在は約50%に落ち込み、輸出規制による損失は数十億ドル規模に及ぶという。

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2025年5月20日、NVIDIA(エヌビディア)。(写真/柯承惠撮影)
NVIDIA(輝達)。(柯承惠攝)
NVIDIA(エヌビディア)。(写真/柯承惠撮影)

関係者によると、NVIDIAは新チップを投入する前に、販売開始後に規制対象とされる事態を避けるため、トランプ政権に対して「販売禁止の回避保証」を求めていたという。中国製品と比べて性能は劣るものの、既存システムを大幅に変更するにはコストがかかるため、多くの中国企業が購入を希望しているとされる。

2025年4月30日。在華盛頓白宮十字廳舉行的關於投資美國的活動中,美國總統川普(Donald Trump)聆聽了輝達執行長黃仁勳的演講。(AP)
2025年4月30日、ワシントンのホワイトハウス・クロスホールで行われた「アメリカへの投資」に関するイベントで、トランプ米大統領がNVIDIAのジェンスン・フアンCEOの講演を聴いた。(AP通信)

NVIDIAや中国政府関係機関は、今回の報道について正式なコメントを避けている。一方で、アリババやテンセント、バイトダンスといった中国の主要IT企業は、国産チップへの切り替えを進めており、NVIDIAへの依存度を下げる動きを加速させている。

NVIDIAの年次報告書によると、中国市場は同社にとって売上第4位にあたり、売上高は171億ドル(約2兆7000億円)で、全体の13%を占めている。米中の地政学的対立が続く中、NVIDIAの中国戦略は大きな転機を迎えている。

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​編集:田中佳奈