台湾で史上最大の後備動員演習「漢光41号」始動 ハイマースや無人機も投入

2025-07-09 11:46
歴史上最長、最多人員を動員した漢光41号演習 国防部長の顧立雄氏(中央)が注視したこと。(資料写真、国防部提供)
歴史上最長、最多人員を動員した漢光41号演習 国防部長の顧立雄氏(中央)が注視したこと。(資料写真、国防部提供)
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史上最長の期間、最大規模の後備兵力を動員する「漢光41号演習」が7月9日より開始された。国防部政務弁公室主任兼報道官の孫立方中将は、今回の漢光演習にはいくつかの特徴があると説明した。たとえば、新型兵器である「ハイマース(HIMARS)」の登場をはじめ、無人機や無人艇の投入、戦闘の開始を従来のように海岸線での決戦からではなく、前線を灰色地帯まで引き上げ、早期の襲撃段階から戦争の様相を呈するような訓練内容となっている点などが挙げられる。

また、通信が遮断された場合においても、部下が上官の命令を待たずに行動を取れる「脱中心化型の指揮統制」や、市街地戦の演練も盛り込まれている。戦車が一晩中、民家の前を轟音を響かせて走行することもあるだろう。そしてその騒音は、夜通し続く可能性がある。

しかし、このように多くの変化や想定が盛り込まれる中で、国防部長の顧立雄氏が特に重視しているのは、新兵器でもなければ、新たな戦術でもない。台湾が採るべき戦い方の選択ですらない。では、顧立雄国防部長が真に関心を寄せているのは、一体何なのか。

20240723-花蓮空軍基地23日舉行漢光40號演習操演,國防部長顧立雄(圖右二者)與參謀總長梅家樹(圖右三者)搭乘福克-50行政專機抵達。(陳昱凱攝)
漢光41号演習の多種想定の中で、国防部長顧立雄氏(左から二番目)が特に重視している事項。(資料写真、陳昱凱撮影)

後備動員は即戦力ではない まず専門訓練の再受講が必要

顧立雄氏が重視するのは、後備戦力が実際の戦力として機能するまでに必要な時間である。これは、台湾がどれほど持ちこたえられるかという根本的な問題に直結する。孫立方中将も自ら語っているように、後備戦力の動員とは、兵士が集合して銃を受け取ったら即戦闘に参加できるという単純なものではない。各人が自らの任務を理解し、状況を把握したうえで、専門訓練を再度受け、初めて戦術上の位置に配置されることになる。

今回の演習では、第206旅全体の後備兵力が動員された。目的は、戦力の回復に要する時間が本当に14日なのか、それとも10日で済むのかを検証することにある。国軍としては、2025年の「漢光41号演習」を、そうした戦力回復時間の検証における出発点と位置づけており、今年得られる経験とデータをもとに、今後はそのスピードをさらに高めていく考えだ。

とはいえ、後備戦力の形成に10日から14日を要するという見積もりは、どのようにして導き出されたのか。また、一般的な認識として、中国が台湾を攻撃する場合は電撃戦を想定している。果たして、台湾に後備戦力の形成を待つだけの10日から14日という猶予が存在するのか。この点について軍関係者は、後備戦力の動員には、戦時における緊急命令の発令など、非常に複雑なプロセスが関係していると説明する。そのうえで、近年では中国が演習から実戦へ移行するまでの時間差が縮小傾向にあることも踏まえ、台湾側のプレッシャーは増していると述べた。

では、なぜ後備戦力の形成に10日から14日も必要なのか。軍関係者によれば、後備部隊は県市ごと、また新兵訓練部隊ごとに分かれており、さらに任務や専門分野も異なる。加えて、各部隊を指導できる教官の配置も必要となる。単なる専門訓練だけでなく、戦闘訓練も行う必要があり、訓練課程や部隊の性質によって所要時間にはばらつきがある。こうした要素を総合的に計算し、軍は現在、10日から14日という基準的な所要日数を導き出した。まずはこの数字をもとに検証を行い、将来的には後備戦力の即応性をさらに高めていく方針である。

20230511-桃園市後備旅第二營教育召集後備軍人進行射擊訓練。(柯承惠攝)
​後備戦力の動員は即戦力ではなく、専門訓練を経て各自が状況を理解する必要がある。(資料写真、柯承惠撮影)
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