米国による対等関税の猶予期間が7月9日に終了する中、トランプ氏は7日から各国に対して関税通知書を送付する方針を明らかにした。ただ、台湾に関する具体的な状況は不明のままであり、先行きへの不安が広がっている。仮に台湾・米国間の関税交渉が行き詰まれば、与党内からも政府に対して交渉経過や米国側の要求を明らかにすべきとの声が上がっている。
米国のムニューシン財務長官は、対等関税の猶予期間を7月末まで延長すると表明。協定が締結できていない国に対しては、8月1日から4月に発表された関税率を適用する予定であり、7日から順次通知書が送付されるという。これは実質的に交渉相手国への圧力、あるいは「最後通牒」に近い措置と受け止められている。企業関係者や市民の間でも、台湾の交渉の行方が注目を集めており、懸念は日増しに強まっている。
台湾の副総統である蕭美琴氏は、「交渉には困難があるが、双方の代表が努力を続けている」と述べた。また、「複雑な関税状況を含みながらも、両国の共通の繁栄を目指した集中的な協議が行われている」との見方も示された。経済部の郭智輝部長も、「交渉は進行中だ」と発言している。
これらの発言は、交渉が難航している現状を柔らかく表現する外交的な言い回しと受け止められている。一方で、米国側の発言はより直接的だ。ムニューシン氏は6日、米CNNの番組で「台湾およびEU諸国が合意に達しない場合、4月に発表された関税を課す」と明言。海外メディアは、台湾を“緊張しながら見守る国”のひとつとして紹介している。
現在、台湾は米国との合意に至っておらず、通知書を受け取るのは避けられない状況だ。仮にそれが32%の関税でなかったとしても、既存の10%超の基礎関税を上回る水準になることは確実とされている。米国が通知書を圧力の手段として活用していることを踏まえれば、台湾にとっては大きな負担となり得る。
台湾がここまで譲歩しているにもかかわらず、交渉が難航しているのは意外といえる。頼清徳氏は早くから「ゼロ関税」を目指すと明言し、米国が時折言及する「為替操作国」問題にも対応。台湾ドルを自発的に上昇させ、今年上半期には2桁台の上昇を記録した。
さらに、TSMCは半導体分野での米国投資を1,600億ドル(約25兆円)超に拡大。アラスカのパイプラインに対しても、直接の関係がないにもかかわらず100億ドル(約1.5兆円)超の投資を約束している。
これほどまでに台湾が譲歩を重ねているにもかかわらず、関税協定が成立しない現状には驚きが広がっている。米国側が台湾にとって不利な条件を提示しているのではないかとの疑念が拭えない。
今回の対等関税交渉は、名称こそ「関税協議」だが、その実態は広範囲に及ぶ。たとえば英国との交渉では、米国が中国を含む外国資本への審査権を求めた。日本との交渉では、防衛費分担増が議題に含まれており、EUとの協議ではデジタル規制や気候関連政策、たとえば炭素国境税やエネルギー課税についての要求がある。