護国神山は空洞化するのか?8》TSMCは海外に出ても台湾を守れるのか 米国は65億ドル補助で資本参加を要求、台湾の長年の優遇策は水の泡に?

2025-11-23 21:14
トランプ氏の復帰後、「TSMCを実質的な米国企業に」という圧力が一段と強まっている。(写真/蔡親傑撮影)
トランプ氏の復帰後、「TSMCを実質的な米国企業に」という圧力が一段と強まっている。(写真/蔡親傑撮影)
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9月19日、米国の半導体大手Nvidia(エヌビディア)は、Intel(インテル)へ50億ドル(約7,750億円)の投資を行うと発表した。かつては「投資しない」と言い切っていたNvidiaが、半年足らずで方針を転換した形だ。背後には、トランプ大統領が掲げる「世界の半導体サプライチェーンを再編する」という強い意志があるとみられ、TSMCを含む台湾勢は、いまや米国の戦略の中心に組み込まれている。

米国商務長官ハワード・ルートニック氏は、TSMCのアリゾナ工場が「CHIPS法」に基づき65億ドル(約1兆75億円)の補助金を得ることについて、「全く理にかなわない」と公に批判。「企業へのギフトのようだ」と述べ、Intelが米国政府に出資を受け入れているのを例に、TSMCも同様に資本参加を認めるべきだと暗に求めた。

しかし台湾政府は長年、TSMCへの税制優遇を米国を大きく上回る規模で続けてきた。TSMCが世界的ファウンドリ企業へ成長したのは、この制度的後押しがあったからだ。では、米国が“わずか”65億ドルの税控除でTSMC株を求めてきた場合、台湾はそれを受け入れるべきなのか。

台湾の半導体産業は、税制だけで育ったわけではない。1973年、行政院長だった蔣経国氏は工業技術研究院(ITRI)を設立し、孫運璿氏らと共に米国のIC技術導入を進めた。1976年には邱羅火氏を含む19名の若手技術者を米RCAに送り込み、製造プロセスからIC設計まで徹底的に学ばせた。

その後、李国鼎氏が張忠謀氏を台湾に招き、TSMC創設につながった。いまのTSMCの地位は、こうした半世紀にわたる官民の積み重ねの結果である。

当時米国は、日本の台頭を抑えるため1985年の「プラザ合意」で急激な円高を誘導し、翌1986年には日本のDRAMを「ダンピング」と認定し、「日米半導体協定」を結ばせた。この結果、日本には100%の懲罰関税が課され、台湾と韓国が半導体産業を伸ばす余地が生まれた。台湾はその好機を逃さず、半導体産業の育成に向けて巨額の税制支援を投じてきた。

李国鼎、KT李、財政部長、経済部長、科技教父。(新新聞資料照)
2023年11月、TSMC創業者の張忠謀氏は第1回李国鼎賞を受賞した際、「李国鼎氏(写真)がいなければ、TSMCも存在しなかった」と語った。(写真/新新聞)

高科技投資控除、8年間で6,000億台湾ドル突破半導体・光電材料・部品製造が3分の1を占める

2015年、立法院予算センターは「科学工業園区の設置コストと転換」に関する研究報告をまとめた。

馬英九政権の税制改革により、租税優遇は「促進産業発展特別条例(促産条例)」の設備投資控除から、「産業イノベーション条例(産創条例)」の研究開発控除へ移された。

背景には、台湾のハイテク産業がすでに国際競争力を持ち、投資控除が「税基の流出」を招き、事実上の輸出補助となっていた問題がある。

報告によれば、台湾のハイテク企業は科学園区に工場を設けることで、新規投資設立5年間の免税、増資拡大4年間の免税および設備投資控除などの大規模な優遇措置を受けていた。

これらの措置は2001年に一度廃止されたが、その後は促産条例へ戻され、2005〜2013年の「科学園区」関連の税式支出は合計402.11億台湾ドル(約1,969億円)に達した。さらに2005年以前の優遇まで含めれば、規模はさらに大きい。

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