日中関係が急速に緊張するなか、米国務省のトミー・ピゴット副報道官は20日、X(旧Twitter)で異例の発信を行い、「尖閣諸島(釣魚台列嶼)」を名指しで取り上げ、米国の対日防衛コミットメントは「揺るぎない」と強調した。
ピゴット氏は投稿で次のように述べた。「米国は日米同盟、および日本が実効支配する尖閣諸島を含む日本の防衛に対するコミットメントを揺るぎなく維持している。日米同盟はインド太平洋地域の平和と安全の礎だ」さらに、「台湾海峡、東シナ海、南シナ海において、武力や威圧による一方的な現状変更に米国は断固反対する」とも付け加えた。
外交筋によれば、この投稿は通常の声明より明確に踏み込んだ内容で、米国務省高官が尖閣諸島に直接言及するのは珍しい。特に「台湾海峡問題」と同一文脈で扱った点は、三つの海域を一体の戦略枠組みとして捉える米政府の意図を示しているとの見方が強い。
「台湾有事」が導火線に
今回の緊張の発端は、日本の高市早苗首相が国会質疑で次のように述べたことだった。「台湾有事が武力行使を伴う場合、日本の安全保障法における『存立危機事態』に該当する可能性がある」これは日本が集団的自衛権を行使する余地を示唆する発言で、日本国内では大きな注目を集めたが、中国側は「越えてはならない一線」への挑戦と受け止めた。
その直後、中国駐大阪総領事の薛剣氏がSNSで高市首相を激しく非難。日本の与野党議員がこれを一斉に批判し、北京側は多方面で対抗措置を展開した。
― 外交的抗議
― 日本産水産物の輸入規制拡大
― 対日批判の世論強化
― 黄海での実弾演習増加
これにより日中摩擦は急速にエスカレートしている。
尖閣諸島(釣魚台)が日中・日米のせめぎ合いの交点に
尖閣諸島(釣魚台)をめぐる主権争い自体は長年続いているが、高市氏の発言以降、その象徴性は一気に高まった。日本は行政的に実効支配し、中国と台湾も主権を主張している。米国はこれまで通り「尖閣は日米安保条約第5条の適用対象」との立場を維持してきたが、ピゴット氏が今回あえてSNSで直接言及したことは、北京に対する強い牽制と受け止められている。
尖閣諸島(釣魚台)周辺で挑発的行動があれば、それは単なる日中摩擦ではなく、日米同盟全体に対する挑戦と見なす。という明確なメッセージだ。さらに、中国の黄海での演習強化により、日本国内では「北方からの圧力が増している」との危機感が広がり、釣魚台・黄海・台湾海峡が連動した一体の安全保障リスクとして認識され始めている。
台湾の視点:台海と東海のリスクはすでに一体化
台湾側から見ると、今回の問題は単なる日中衝突ではない。
高市首相の「台湾有事」発言により、日本国内で台海危機の位置づけが法的に再定義されつつあり、米国は台湾海峡・東シナ海・南シナ海をまとめてインド太平洋の安全保障枠組みとして扱う立場を、今回の声明ではっきり示した。
つまり、釣魚台周辺で緊張が高まれば、台湾海峡リスクも連動して高まる台海が不安定化すれば、日本・米国が「地域安全保障」として介入する可能性があるという構造がより明確になった。台湾にとって地政学的連動は過去よりも速く、直接的で、回避しがたいものとなりつつある。
編集:梅木奈実 (関連記事: 「中国人が日本から消える?」SNSに投稿相次ぐ「街はいつも通り」 中国、対日渡航50万枚キャンセルの裏側 | 関連記事をもっと読む )
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