AI時代の「新たな石油」は電力 中国が圧倒的優位を確保、米国は追随 台湾は構造的制約に直面

米ジョージア州の牧場に設置された太陽光パネル群。敷地内では1500頭を超える家畜が暮らしている。(写真/米エネルギー省Flickr)
米ジョージア州の牧場に設置された太陽光パネル群。敷地内では1500頭を超える家畜が暮らしている。(写真/米エネルギー省Flickr)
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世界的に人工知能(AI)が急拡大するなか、「電力」が国際競争の核心資源として浮上している。一般にはNVIDIA(エヌビディア)のGPU供給不足や巨大モデルの急増、AI応用の爆発といった現象に注目しがちだが、データセンターの電力消費が都市規模に迫るなか、計算能力の拡張を本質的に左右するのはエネルギー供給そのものである。

産業専門家で、微驅科技の総経理を務める呉金榮氏は『風傳媒』の取材に対し、「皆が議論しているのは算力、チップ、モデルだが、電力がなければどんなハードウェアもただの鉄屑だ」と語った。落ち着いた口調ながら、AIが世界のエネルギー秩序を新たな転換点へ押し進めているという、業界内で強まる認識を示した。

中国の電力急増を可能にする 完全な太陽光サプライチェーン

OpenAIはAI時代において「電力は新しい石油」であり、AI基盤整備の戦略資産だとして、米政府に年間100GWの発電容量の追加を提案している。

呉氏によれば、各国は自国の状況に応じて電力増強計画を進めている。例えば米国は2024年に約53GWを追加する見通しだが、中国の増加量は圧倒的で466GWに達し、米国の約8倍に相当する。

中国が電力を急速に増やせる背景には、太陽光産業のサプライチェーンが「多結晶シリコン、単結晶シリコン、太陽光ウエハー、太陽光パネルモジュール」まで完全に整備されている点がある。その結果、中国は太陽光発電の導入量で世界最大となり、年間ベースでも新規電力の伸びが群を抜いている。

呉氏はさらに、「中国は太陽光発電の大規模開発を可能にする広大な土地面積という利点も持つ」と指摘。内モンゴルや新疆には、数十GW規模の太陽光発電施設を一度に建設できる広大なエリアがあり、中国のエネルギー拡張は「スケール化」の特徴を備えていると述べた。

専門は半導体市場情報とトレンド分析、高科技市場トレンド分野の専門家で現任の微驅科技総経理の呉金栄氏。(王秋燕撮影)
半導体市場情報とハイテク動向を専門とし、現在は微驅科技の総経理を務める呉金榮氏。(写真/王秋燕撮影)

国際エネルギー機関(IEA)と国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のデータでも、中国の新規再生可能エネルギー容量は世界全体の6割超を占め、風力・太陽光・水力の各分野で最大の建設国となっている。

米国のエネルギー基盤を阻む老朽電網と州間制度

一方、米国は成熟したエネルギー市場を持ちながら、老朽化した送電網、州間送電の規制、接続申請に数年を要する制度などが障害となり、エネルギー建設の進捗が著しく遅れている。

NVIDIAのCEO、ジェンスン・ファン氏は11月初旬、英『フィナンシャル・タイムズ』主催の「未来AIサミット」に出席し、中国は国内企業に対する手厚い補助金と「電力がほぼ無料に近い環境」によりAI能力を急拡大させていると指摘。そのうえで「中国はAI競争で勝利するだろう」と述べた。

さらにファン氏は、西側諸国、特に米国と英国が「犬儒主義(cynicism)」に縛られていると批判。米国が州ごとに独自の法律を設ければ、AI産業は「50種類の規則が錯綜する混乱」に陥りかねないと警告した。

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