台湾軍の新型M1A2T戦車、「地表最強」のはずが米軍仕様より性能低下?射撃統制22秒遅延の可能性報じられる

2025-11-21 16:31
「地表最強の戦車」と持ち上げられたM1A2Tは台湾で正式配備されたものの、与党・民進党の王定宇氏から「近代化戦力の浪費だ」と手厳しい批判を受けた。(写真/顔麟宇撮影)
「地表最強の戦車」と持ち上げられたM1A2Tは台湾で正式配備されたものの、与党・民進党の王定宇氏から「近代化戦力の浪費だ」と手厳しい批判を受けた。(写真/顔麟宇撮影)
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「地表最強」とも称されるM1A2T戦車が、2025年10月31日、台湾総統・賴清德氏の立ち会いの下で正式に部隊編成された。国防部は盛大な閲兵式を実施し、米国もアメリカ在台協会(AIT)から主任と組長を派遣して観閲に参加した。

ところが民進党の王定宇氏は11月13日、立法院での専案報告に対する質疑を終えた後、視察時に「3輌の戦車が同じ目標に向けて無秩序に射撃していた」と突然明らかにし、注目が集まった。

M1A2Tはこれまで「過剰なまでに」高く評価されてきた。報道によれば、賴氏は2025年7月にM1A2Tの実弾射撃を視察した際、終了後に「女性ドライバーの自信に満ちた目が印象的だった。さらに乗っている車両はフェラーリよりも高級だ」と満足げに語ったとされる。その表情には肯定的な評価がはっきりと表れていた。

しかし、この賴氏が「フェラーリより高級」と評した戦車が、与党側の王氏から「近代化された戦力を浪費している」と批判される事態となり、何が起きているのか疑問が広がっている。

20251031-総統頼清徳31日が主催「陸軍装甲第五八四旅連兵三営換装M1A2T戦車成軍典礼」。(顔麟宇撮)
賴清德氏(中央)はM1A2Tによる国軍戦力の近代化に強い期待を示し、自ら就役式を主宰した。(写真/顔麟宇撮影)

米国は当初売却に反対 装甲兵出身の部長2人が強く要望

陸軍は「銳捷プロジェクト」で約405億台湾ドル(約1,985億円)を計上し、米国からM1A2T型アブラームス戦車108輌を調達した。陸軍が新型戦車を受領するのは1994年のM60A3以来30年ぶりで、北部の重要拠点を守る主力部隊として運用される見通しだ。

多額の予算を投じて導入され、「地表最強の戦車」と称賛されてきたM1A2Tだが、王氏は「BMS(戦場管理システム)を調達していない」と指摘し、「フェラーリを買いながら車載コンピュータを積んでいないようなものだ」と痛烈に批判した。BMSがないことで、3輌が1目標を攻撃しても射撃情報が共有されないままになり、2輛分の砲撃が無駄になり、接敵時間も伸びる“盲剣士のような状態”になっているという。

実際、関係者によると、米軍は当初M1A2を台湾に売却する意向を示していなかった。理由は「台湾には必要性が低く、予算は艦艇やミサイルの調達に回すべきだ」と判断されたためだとされる。

ただ、建案を検討していた当時、国防部長を務めていた嚴德發氏と邱國正氏はいずれも装甲兵出身で、新型戦車の導入を強く希望していた。米国側はその後、HIMARS多連装ロケットシステムなど複数の装備を提示し、台湾も購入を進めたが、それでも台湾側はM1A2導入の必要性を主張し続け、最終的に米軍が売却に同意したとされる。

20251031-陸軍装甲第五八四旅連兵三営換装M1A2T戦車成軍典礼。(顔麟宇撮)
米軍は当初、台湾へのM1A2戦車売却に前向きではなく、限られた予算は艦艇やミサイルの調達に充てるべきだとの見方が示されていた。(写真/顔麟宇撮影)

M1A2「台湾仕様」は米軍型より22秒遅れ 致命的な時間差

報道によれば、台湾が調達したM1A2には「T」が付く台湾特別仕様が採用されているが、実際には性能が一部低下しているという。なかでも米軍仕様との大きな違いは射撃統制システムだ。米軍型では戦場管理システム(BMS)を通じ、車長が目標を発見するとデジタルパネル操作だけで即座にロックオンし、使用する弾種まで自動で選択できる。

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