外国人人口が過去最多更新 是川夕部長「『選ばれない国』論は実態とズレ」
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の是川夕・国際関係部部長は11月4日、日本記者クラブで新著『「ニッポンの移民」――増え続ける外国人とどう向き合うか』(ちくま新書)について記者会見を開き、外国人人口が過去最多を更新する日本の現状をめぐり「日本は『選ばれない国』と言われるが、データを見る限り実態は大きく異なる」と述べ、世論のイメージとのずれを指摘した。
会見では司会役の小林伸年・日本記者クラブ企画委員(時事通信社)が、今年6月末の在留外国人数が約322万人に達し、過去最多を記録したことに触れ、「外国人はすでに日本の総人口の3%を占めている」と説明。これを踏まえ、是川氏の研究成果をもとに議論が始まった。
是川氏は、人口減少が進む中で外国人流入が持つ意味は極めて大きいとしたうえで、社人研の将来人口推計を引用。「出生率が下がり続ける一方で、実績として年間25万人を上回る入国超過が続き、人口減少を明確に緩和している」と述べた。
世間に根強い「日本は移民を受け入れていない」という認識については、国際移住の分類基準を用いて反論。現在の在留外国人の6割以上は永住型のカテゴリーに属し、「日本の受け入れ規模は国際的に見ても小さくなく、主要国の中で十分大きい」と指摘した。特に高度人材の受け入れでは、日本は国際評価が高いという。
さらに是川氏は、日本の移民受け入れの歴史は欧米型ではなく、アジアの労働移動の流れとともに形成されてきた点を強調。戦後の「排除と管理」の時代から、定住支援の整備、技能実習制度の導入、特定技能制度の創設へと至る政策の変遷を示し、「制度は現場の実態と人権保障を踏まえながら段階的に拡大してきた」と説明した。
アジア諸国から日本を目指す理由については、国際移住研究の新潮流である「意欲・潜在能力モデル」を紹介。所得の上昇と人口構造の変化が連動し、「経済格差が縮まるほど、移住を志向する力と、実現できる可能性はむしろ高まる」と解説した。ギャラップ社の調査でも、日本はアジア地域で移住希望先として上位にあり、とりわけ高学歴層の志向が強いという。
会見の締めくくりで是川氏は、「外国人人口の増加は単なる偶然ではなく、構造的な現象だ」と強調。「日本は選ばれなくなった」という世論の空気とは裏腹に、データが示すのはまったく逆の姿だと述べた。
質疑応答では、技能実習制度の課題や国際比較に関する質問が相次ぎ、日本の受け入れ政策の方向性について活発な議論が続いた。
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