李忠謙コラム:エコノミスト「世界はトランプとAIの時代へ」 2026年を左右する「二つの確定要素」とは?

NVIDIAの創業者兼CEOジェンスン・フアン氏は、世界の無線通信ネットワークがこれまで外国技術に大きく依存してきたと指摘し、次世代通信規格では米国が主導権を握るべきだと強調している。 (写真/劉偉宏撮影)
NVIDIAの創業者兼CEOジェンスン・フアン氏は、世界の無線通信ネットワークがこれまで外国技術に大きく依存してきたと指摘し、次世代通信規格では米国が主導権を握るべきだと強調している。 (写真/劉偉宏撮影)

いくつかの台風が過ぎ去り、気温が下がり始めたことで、2025年の終わりが近づいていることを実感する。最近「台湾病(Formosa flu)」との表現で台湾社会の構造問題を批判し、大きな反発を招いた英誌『エコノミスト』は、恒例の新年展望「The World Ahead 2026」を発表し、来年の世界をどう捉えるべきかを示した。特集編集長トム・スタンディッチ氏は、2026年もなおトランプ氏が強い影響力を及ぼす世界が続くと指摘し、「我々はその世界の中で生きているに過ぎない」と冷徹に述べている。

最近北京を怒らせた高市早苗首相の発言を例に取るとよい。「台湾有事は日本有事」との論理を用いて自衛隊の憲法上の制限を解除し、「集団的自衛権」を正当化する動きが台湾にとって助けになるのか、危険を招くのか、あるいは日本自身を危うくし、軍国主義復活につながるのか――評価は割れている。もしその背景にトランプ氏の影響を読み取ろうとするなら、この予測不能な大統領が高市氏の発言にどう反応するかを見るのが手っ取り早い。あるいは、先月のアジア歴訪でトランプ氏が日本に「顔を立てた」ことが高市氏の自信につながっていると考えるなら、『エコノミスト』の時代認識はあながち誤りではない。

2026年まで残り40日余り。米国、さらには世界全体がトランプ氏の権力意志に翻弄され続けるだろうという予測は、『エコノミスト』の裏付けがなくても、多くの人が共有する見方だ。しかし2025年には、トランプ氏以外にも重要な主役がいる。インフレ時代にもかかわらず米株を押し上げ、NVIDIAを史上初の時価総額5兆ドル企業へ押し上げた人工知能(AI)である。

トランプ時代が福か禍か判断しきれないように、ChatGPT登場以降のAIの急速な進展が人類の未来や世界経済にとって良いのか悪いのかも定まっていない。2026年を方向づける二つの確定要素――トランプとAI――が好機なのか脅威なのかさえ見極められない以上、来年の世界が良くなるか悪くなるかを判定することは不可能だ。

AIが2026年にどれほどの進化を遂げているかは不透明だが、2025年時点のAIでさえアマゾンをはじめとする企業に大規模なリストラをもたらしている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、この悪化傾向が2026年にさらに深刻化する可能性を指摘する。AIの普及と、それによって職を失った人々の求職が重なることで、新卒者が初級職を見つけることは一段と厳しくなるだろう。しかし若者の就職難以上に、世界経済にとっては「AIバブルがいつ崩壊するか」の方がはるかに大きな脅威かもしれない。

AIバブルなのか、どの段階にあるのかについて西側メディアは激しく議論しているが、結論は出ていない。ただし争点の核心は二つだ。第一に、AI開発には巨額の資金が必要であり、「月額20ドル」の利用料では到底まかなえないこと。NVIDIAの黄仁勲氏やOpenAIのサム・アルトマン氏が続けてきた“資金の左手から右手へ”の循環融資はいつまで持つのか。

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