高市首相の「台湾有事」発言が波紋 日中関係が急冷し外務省が特命訪中で火消し図る

2025年10月28日、アメリカのドナルド・トランプ大統領がジョージ・ワシントン級航空母艦で日本の高市早苗首相を偉大な女性指導者と評賛した。(写真/AP通信提供)
2025年10月28日、アメリカのドナルド・トランプ大統領がジョージ・ワシントン級航空母艦で日本の高市早苗首相を偉大な女性指導者と評賛した。(写真/AP通信提供)
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日本の高市早苗首相が「台湾有事」に関する国会答弁で示した見解が、瞬く間に日中間の新たな外交火種となった。中国駐大阪総領事・薛剣氏による「斬首」発言は、北京の「戦狼外交」が再び表面化したことを象徴している。中国が文書・軍事両面で日本への圧力を強めるなか、日本外務省の金井正彰アジア大洋州局長は17日、政府の指示を受けて北京を訪問し、混乱状態にある日中関係の調整に乗り出した。

外交問題の発端は、高市首相が7日の衆議院予算委員会で、中国が台湾へ侵攻する、いわゆる「台湾有事」が発生した場合、状況次第では日本が集団的自衛権を行使し得る「存立危機事態」に該当する可能性があると述べたことにある。この発言は中国の敏感な神経を直ちに刺激した。現職首相が「台湾有事は日本有事」と明確に語ったのは今回が初めてで、従来の「戦略的曖昧さ」から大きく踏み込んだ形となった。

用語説明:存立危機事態とは

「存立危機事態」とは、2015年に安倍晋三元首相が推し進めた安保関連法改正で新設された概念である。

日本の「平和安全法制(安保法案)」では、「日本と密接な関係にある他国への武力攻撃により、日本の存立が脅かされ、国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される明確な危険がある場合」、これを「存立危機事態」と定義する。

この場合、日本が直接攻撃されなくても、自衛隊は「必要最小限度」の武力行使、すなわち集団的自衛権を行使できる。一方で「台湾有事」が存立危機事態に該当するかどうかは、日本の政界と学界で長年議論が続いている。

反対論:台湾情勢と日本の存亡を安易に結びつければ、日本が戦争に巻き込まれるリスクが高まる

支持論:台湾は日本の海上交通の生命線であり、中国が台湾を支配すれば日本のエネルギー・貿易が致命的打撃を受けるため、台湾防衛は日本防衛と同義

高市氏の「台湾有事」発言に続き、中国駐大阪総領事の薛剣氏がSNSで「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」と投稿したことが、外交危機を一気に拡大させた。日本外務省はただちに中国駐日大使・呉江浩氏を呼び出し、強く抗議。一方、北京の中国外交部も日本駐中国大使・金杉憲治氏を召喚し、高市氏の発言撤回と「実際の行動による是正」を要求した。さらに11月14日夜、中国外交部は異例の「日本渡航警告」を発表し、中国国民に「日本への渡航を控える」よう促し、留学生にも慎重な判断を求めた。 (関連記事: 高市早苗氏の「台湾有事」宣言が日中関係に波紋 - 「斬首」発言を巡る外交緊張の始まり 関連記事をもっと読む

日本の世論、高市政権への支持は依然高水準

注目すべきは、高市早苗氏による「台湾有事」発言が物議を醸した一方で、内閣支持率は依然として高水準を維持している点である。『朝日新聞』が16日に公表した最新の世論調査によれば、高市内閣の支持率は69%に達し、10月の就任当初の68%とほぼ同水準で、歴代首相の中でも極めて高いレベルにあるという。『共同通信社』の調査でも、支持率はわずかに上昇し69.9%となった。

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