『風傳媒』の報道 よれば 、11月7日に台湾で開かれた中国国民党の黨団 全代会(国民党・立法院会派の全国代表会議)で内規改正案が可決され、今後は黨団 総沼が連続して選出・続投できるようになった。これにより、現職の黨團総沼・傅崐萁氏が、今後も同じポストを務め続けられる可能性が一気に高まった。
国民党立法院黨団 (国会における国民党会派)の内規では、本来、黨団 総沼の任期は1年で、連続して務められるのは1回までと定められていた。ところが今回は、国民党の立法委員8人が共同提案し、この連任制限を撤廃する改正案を提出。審議の結果、改正案は可決され、この規則緩和によって傅崐萁氏が黨團総沼として「連投」できる環境が整ったことになる。
報道によると、7日の黨団 大会では当初、NCC人事案が主な議題とされていた。ところが会議の後半で、黨団 幹部が突然「黨団 総沼の2年条項を廃止する」連署案を取り出し、約30人の藍委(国民党所属の立法委員)が署名済みだとして討議を始めたため、場内の一部青委は、完全に不意打ちを食らった形になった。
この突発的な提案に対し、3〜4人の青委が反対意見を表明した。主な論点は「黨団 制度をこうした形で壊すべきではない」「議題として事前に知らされておらず、黨団 メンバーも全員そろっていない以上、後日に改めて議論すべきだ」といったものだった。しかし、そうした異論にもかかわらず、最終的には賛成票が上回り、内規改正は押し切る形で成立した。
約30人の国民党立法委員が署名し、党団総沼の連任制限を撤廃。傅崐萁氏の連任への道が開かれた。(写真/柯承惠撮影)
傅崐萁氏の内規修正構想は以前から 一時は鄭麗文氏による総沼交代説も 傅崐萁氏が国民党内規を変更し、「総沼は1回まで」という連任制限を外そうとしているという話は、じつは2025年の旧正月前後からすでに党内で噂になっていた。今回の内規修正が「電撃採決」のような形で通ったことについて、傅崐萁氏を支持する立法委員やベテラン秘書らは、情報が外に漏れなかったことに加え、傅崐萁氏が30人を超える青委の署名を取り付けた事実そのものが、この1年あまりのあいだに彼が主導してきた黨団運営の路線や、民進党黨団 との対決で挙げた「戦果」に対し、黨団 内に一定の評価と信頼がある証拠だと受け止めている。総沼続投は「ある程度、織り込み済みだった」との見方も出ている。
10月18日に鄭麗文氏が国民党主席に選出されたあと、『風傳媒 』は、黨団 と党本部の権力を安定させるため、鄭麗文氏の陣営とCK楊氏、そして傅崐萁氏がすでに同盟関係を結んでいると報じた。
一方、その後の一部メディアは「鄭麗文氏が党務人事を打診する過程で、立法院側に総沼ポストについて意見を聞き、『林德福氏をどう見ているか』と口にした」と伝え、総沼ポストに依然として人事の余地があるかのような印象も与えた。
しかし、『風傳媒』の取材によれば、11月1日の全代会の昼休み、傅崐萁氏は台北・福華飯店で約500人の党代表を招いて宴席を設け、その場には立法委員の邱鎮軍氏や鄭正鈐氏も同席していたという。その時、鄭麗文氏陣営およびCK楊氏と連携する北部の重要人物に対し、「鄭麗文氏は傅崐萁氏を総沼から外すつもりなのか」と率直に尋ねた人がおり、この人物は「いや、そのようなことはない。我々のあいだですでに話はついている」と強調した。質問した側はこの返答を聞き、傅崐萁氏の総沼続投は既に固まっていると確信したという。
鄭麗文氏が党団総沼を立法委員の林德福氏(写真)に交代させるとの観測も出ていたが、最終的に傅崐萁氏の続投が決まった。(写真/柯承惠撮影)
傅崐萁氏の広範な掌握 独自グループを立ち上げ「中央台所」機能を構築 傅崐萁氏と鄭麗文氏の陣営による同盟は、党団(国民党の立法院会派)や中央委員・中常委といった党職の枠を超えて広がりつつあるようだ。近年、国民党では党主席が交代するたびに、公式のメディア連絡グループだけでなく、評論家や地方議員などとやり取りする「非公式の情報共有グループ」も更新されてきた。鄭麗文氏も地方政府との連携強化を目的に、党中央と地方政府をつなぐコミュニケーショングループを新設している。
このグループには約20人が参加しており、党中央スポークスマンを務める牛煦庭氏(立法委員)と江怡臻氏(新北市議員)が立ち上げた。各地方政府のメディア担当も加入しており、決して低い層ではない。台中市で発生したアフリカ豚コレラ問題や、鄭麗文氏が台北・馬場町で行った慰霊行事といった話題もグループ内で共有され、牛煦庭氏が党中央の公式見解を即時に提供するなど、迅速な連絡網として機能している。
また、傅崐萁氏の事務所でメディア対応を担当する人物もこのグループに参加しており、同氏はグループ内で「民進党中央の中央センターに倣った仕組みを作りたい」と発言しているという。すでに傅崐萁氏の主導で、総予算案、リコール関連、財政立法、米国関税問題、剴剴事件、電気料金、王義川氏や沈伯洋氏への攻防資料、各種スローガン画像などがまとめられ、立法委員や秘書が活用している。今後、党中央に専任スタッフを置き火力を集中させれば、言論面での影響力はさらに強まるとの見方も出ている。
国民党中央と地方政府を結ぶコミュニケーショングループには、立法委員の傅崐萁氏の陣営も参加し、グループ内で強い存在感を示している。(写真/陳品佑撮影)
鄭麗文氏は傅崐萁氏の言いなりなのか? 事務所主任の配置に党団内の思惑 鄭麗文氏の陣営が傅崐萁氏と同盟を組んだことで、党団運営を完全に傅崐萁氏に委ねるのか。立法院のベテラン秘書らは「必ずしもそうではない」と慎重に見ている。
かつてメディアが報じたように、国民党委員・許宇甄氏の事務所主任である沈建億氏が、党団主任の江桂芳氏から重要資料「法案進度管理表(審議進捗表)」が提供されなかったとして署名抗議を始めたケースがある。多くの事務所は抗議の背景を理解しておらず、「党団は議員に奉仕する立場であり、資料提供は当然」と考えていたが、署名が広がるにつれ党団内の空気が一変した。
沈建億氏は国民党の老練な補佐で、江啟臣氏が党主席だった時代には、党団内の官僚文化を変えようと主任を交代させたこともある。しかしその後、傅崐萁氏が総沼に就き江桂芳氏を復帰させ、「党団幹部にのみ仕える体質」が戻ってきたとの不満が積み上がる中で、この署名抗議が表面化した。
報道が出ると、傅崐萁氏や羅智強氏ら党団幹部が自ら事態の収拾に動き、沈建億氏に対し圧力をかけたとされる。さらに前述の傅崐萁事務所のメディア担当者が、補佐グループ内で「自己中心的な人間が多い」と挑発したこともあり、党団と補佐陣との緊張は高まった。
そのため、沈建億氏が鄭麗文氏の党主席事務所主任に就任すると伝わった際、立法院のベテラン補佐の間では「これは党団との連携強化ではなく、むしろ傅崐萁氏の党団支配力を抑える『安全弁』ではないか」との分析も広がっている。つまり、鄭麗文氏の側近に沈建億氏を置くことで、傅崐萁氏が党団を完全支配する状況を防ぐ狙いがあるという見方だ。
鄭麗文氏(左)は傅崐萁氏(中央)と同盟関係にあるものの、信頼する側近の中には傅氏のやり方すべてに同調しているわけではないとみられる。(写真/柯承惠撮影)
傅崐萁氏、地下主席・CK楊氏を頻繁に訪問 会期延長や立法院の「保護網」を協議か 党主席選後、「地下主席」とも呼ばれる実力者・CK楊氏の事務所には党内要人の来訪が続いている。CK楊氏は南部視察を行うなど存在感を高めており、党内で「いま最も影響力を持つ人物の一人」と囁かれている。
風傳媒の取材によれば、複数の関係者がCK楊氏の事務所を訪れた際、傅崐萁氏が中にいたのを目撃したという。傅崐萁氏はCK楊氏に対し、「賴清徳政権の司法動きは止まらず、自身の『選挙アクセサリー事件』(政治献金疑惑)も継続捜査の可能性がある」と述べ、さらに二人の国民党立法委員が死刑執行署名運動に関与している事情を踏まえ、「立法院の保護網を張り続ける必要がある」と相談したとされる。
この話を聞いた一部の国民党議員は苦笑しながら「今会期での延長開催はまず無理だろう」と語ったが、別の匿名議員は「重要議案が通らないのは民進党と行政院の遅延戦術のせいだ」と反論。NCC人事案、政府総予算案、軍人給与の増額など、未処理の重要案件が山積しているため、会期延長の提案はむしろ“建設的な判断”だと擁護した。
一方で傅崐萁氏自身は、「会期を延長するかどうかは賴清徳総統が決めることだ」と述べたうえで、「もし総統府と行政院が法に基づいて予算を通さず、軍警消防の給与を上げないのであれば、それは民進党が国軍や警消を『いじめている』ことになる。国民党は彼らの後ろ盾になる」と主張した。ただし賴清德氏が「善意」を示し、通常会期内で重要議案を処理する意思を持つならば、延会の必要はないとも述べた。