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BBCスキャンダル拡大 内部報告書流出で報道姿勢の欠陥が露呈 会長辞任・トランプ氏は10億ドル提訴へ 2025年11月11日。テレビ画面に映し出された退任予定のBBC総裁ティム・デービー氏。(写真/AP通信提供)
英国放送協会(BBC)が「ミスリーディング編集」スキャンダルに揺れている。これを受け、会長とニュース部トップが相次いで辞任し、米国のドナルド・トランプ大統領は10億ドル(約1,5 47 億円)の損害賠償を求めて提訴するとまで息巻いている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)は10日の社説で、今回の混乱は単なる一つのニュース不祥事にとどまらず、「公共放送が政府に依存し、単一の政治文化に支配されることで、報道の均衡が崩れ、監督も機能不全に陥る」という制度的災難の表れだと指摘。民主国家は、政府がメディアを掌握する危険を忘れてはならないと警鐘を鳴らした。
BBCを追い込んだのは、『デイリー・テレグラフ』に流出した内部報告書だ。これは編集ガイドライン・基準委員会(EGSC)の外部独立アドバイザー、マイケル・プレスコット氏が作成し、同紙が今月3日に掲載したものである。
プレスコット氏は報告書で、BBCがイスラエル・ハマス戦争、トランスジェンダー問題、さらにトランプ氏の2021年1月6日の演説報道において「重大な誤り」を連発したと警告した。このニュースは瞬く間に波紋を呼び、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は8日、「BBCは100%フェイクニュースであり、完全なプロパガンダ装置だ」と痛烈に批判。翌9日、BBCのティム・デイヴィー会長は辞任に追い込まれ、ニュース部門トップのデボラ・ターネス最高経営責任者も同時に辞任した。
2025年11月10日。即任を辞したBBCニュース部門の責任者デボラ・ターネス氏、ロンドンのBBC本社ビル前で(写真/AP通信提供)
WSJ社説によれば、「重大な誤り」という表現は決して大げさではない。トランプ氏が激怒したのは、BBCのドキュメンタリー番組『パノラマ』が昨年の米大統領選直前の週に放送した映像で、2021年1月6日のトランプ演説から約1時間離れた別々の発言を意図的につなぎ合わせ、まるでトランプ氏が暴力を煽動し、支持者に議会議事堂への突入を直接呼びかけたかのように見せかけたためである。
同じ番組では、米国の極右団体「プラウド・ボーイズ」が議会議事堂に向かう映像も放送したが、これは「編集されたトランプ演説」の直後に配置されており、「彼らはトランプの号令に従った」という印象を与える構成になっていた。しかし実際には、プラウド・ボーイズの映像はトランプ演説より前に撮影されたものだった。これは単なる報道姿勢の偏りではなく、もはや「別の現実を創作する行為だ」とWSJは批判した。
さらに、BBCのイスラエル・ハマス戦争報道には、根深いバランス欠如の問題が存在すると述べた。英語ニュースでは、イスラエル批判を事実確認なくそのまま報じる傾向が目立ち、アラビア語チャンネルではより深刻で、イスラエルに好意的な内容の翻訳を避け、2023年10月7日のハマス攻撃以降、平均して毎週2本以上の報道が修正されていたという。
WSJ社説は、「左派メディアに偏向があることは目新しい話ではない。BBCへの批判はサッチャー時代から続いている」と前置きしつつも、今回の事例は「国家がニュース生産を掌握する危険性」を象徴する寓話だと論じる。
2025年11月10日。即任を辞したBBC社長ティム・デイヴィ氏、ロンドンのBBC本社ビル前で(写真/AP通信提供)
英国の公共放送であるBBCは、実質的に全国民から徴収する「ライセンス料」で支えられている。テレビで「放送中番組」を視聴する家庭は、たとえBBCを見なくても、年間174.50ポンド(約3.5万円)を支払わなければならず、支払わなければ最大1,000ポンド(約20.3万円超)の罰金が科される。この「 税収」は年間38億ポンド(約7,688億円)に達する。
進歩派の記者が納税者の資金で自らのアジェンダを推進し、保守党政治家はときおりBBC改革を示唆するものの、BBCはこれに耐え抜き、ほとんど揺らがない存在であり続けてきた。デイヴィー氏もその一例である。同氏は保守党員としての経歴があったが、BBC理事会は2020年、当時の保守党政権をなだめる狙いから彼を起用した。しかし、デイヴィー氏は結局、BBCに根付く左派文化に「同化」していったとされる。
WSJはこう結論づける。「国家が所有する巨大組織をつくった瞬間、保守派はそれを統制することがほぼ不可能になる」。トランプ氏はこの週末、BBCと正面衝突した経験を通じて、この事実を痛感したはずだ。WSJは「大きな政府による産業政策」に傾くトランプ氏に対し、政府権限の拡大がもたらす危険性を再考すべきだと暗に警告している。
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