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台湾・蔡英文元総統の公約が発端か 中油「第3LNG受入基地」予算が急膨張、第4基地は430億台湾ドル超の見通し 台電・協和発電所の基隆「第4接」は、最低価格が430億台湾ドルに達すると報じられている。(写真/呂紹煒撮影)
「観塘外推案」と呼ばれる台湾中油の第3LNG受入基地(第3接)第2期工事をめぐり、11月11日、予算膨張の問題が浮上した。中油幹部と業者の録音には「中油は資金に困っていない」との発言が残されており、再見積りを示唆する内容が含まれていた。第3接第2期の予算は94億台湾ドル(約460億円)から253億台湾ドル(約1240億円)に急増。これにより続く受入基地の入札価格も膨張し、台電の基隆「第4接」では430億台湾ドル(約2100億円)という異例の金額が提示されたとされる。
民進党政権は2016年の発足以降、2025年までの脱原発政策を掲げ、天然ガス発電の比率を大幅に引き上げてきた。台湾は天然ガスの備蓄日数が短いため、より多くのLNGを輸入する必要があり、この数年で台電と中油は受入基地の建設を相次いで推進している。
総統選の公約を受け中油が計画修正 監察院が昨年末に公表した調査報告によれば、中油と台電はエネルギー転換政策に合わせ、天然ガス発電比率を50%に引き上げる計画を策定。LNG受入基地や貯蔵・輸送設備の拡充を進め、総投資額は3793億台湾ドル(約1兆8600億円)に上る(基隆「第4接」を除く)。これらの計画がすべて完成すれば、受入能力は2024年の年間2000万トンから3700万トンへ増強される見通しだ。
中でも北部電力の安定供給を担う第3接は、桃園沖の藻礁保護問題で環境団体の注目を集めた。馬英九政権が2015年に承認した「大潭火力発電所増設計画」(総投資600.8億台湾ドル=約2940億円)は、蔡英文氏が大統領選で掲げた「藻礁を守る」のスローガンによって一時中断に追い込まれた。
蔡英文氏は2016年の総統選で「藻礁を守る」を掲げ、計画が一時停滞した。(写真/AP通信)
この大統領選公約をめぐり、与党・民進党は2021年の藻礁国民投票で反対派を退ける一方、中油は「第3接第2期」の修正版を提出。工業港を外洋側へ455メートル延伸し、浚渫を行わず、外洋埋立地21ヘクタールの埋立を中止、防波堤を短縮する外推案を打ち出した。ただし埋立中止により、当初計画地では貯槽建設ができなくなり、新たな用地を探して再設計を余儀なくされた。
公共事業バブルで皇昌建設が急成長 この外推案により、工費は600.8億台湾ドル(約2940億円)から965億台湾ドル(約4730億円)へと膨張。第2期を受注した皇昌建設は昨年末の決算説明会で、新規受注額が426億台湾ドル(約2080億円)に達し、手持ち案件残高は801億台湾ドル(約3920億円)と過去最高を記録したと発表した。皇昌の株価は昨年初め25台湾ドル(約120円)前後だったが、一連の公共事業受注を経て、今年初めには100台湾ドル(約490円)台に急騰した。
皇昌は第3接第2期の完工に向け、過去6年間で50億台湾ドル(約245億円)以上を投じ、国内最大規模の多目的作業船団を構築。今年初めには海上工事の最終段階を終え、特注の投石管船や台湾初の自主建造コンクリート船が正式稼働し、海事工事市場への進出を強化した。
与党・民進党が2021年の藻礁住民投票で主導権を握る中、中油は「第3接第2期」の修正計画を提出した。(写真/台湾中油提供)
第3接第1期工事は中鼎工程が統括し、下請けとして海事施工業者・東丕建設が担当していた。しかし、2020年3月、東丕の作業船「東坪8号」が強風によりケーブルを切断して座礁し、0.58ヘクタールに及ぶ藻礁を削り取る事故を起こした。これにより環境団体が強く反発し、事故責任を明確にしないまま現場に戻って作業を再開したとして非難。時代力量の立法委員邱顯智氏や陳椒華氏も抗議集会に参加した。
藻礁損壊事故で東丕建設が苦境に この事故を受け、桃園の環境団体は藻礁保護の国民投票を推進。民進党は正面から応戦する一方で、「工業港外推」修正版を再提示した。中油は工期を急ぐため東丕に見積りを依頼したが、同社の提示額が保守的だったため、再見積りを迫る中油側の録音が流出。「経営者の自覚がない」「何度説明しても分からない」といったやり取りが残されていたという。その後、第2期工事の見積額は94億台湾ドル(約460億円)から253億台湾ドル(約1240億円)へと膨らんだ。
中油は入札設計を台湾世曦工程顧問公司に委託。同社は「契約金額が建設業法の上限を超える場合は落札不可」とする資格要件を設定。これにより海事工事実績の乏しかった皇昌建設が、汎亜工程と組んで入札に成功した。資本金12億台湾ドル(約59億円)の東丕建設は藻礁損壊の影響もあり、落札を逃した。
建設各社が増資競争、第4接をめぐり注目 第3接第2期の予算膨張はその後の案件にも波及。高雄の「第7接」外洋堤防工事では、落札額が289.6億台湾ドル(約1420億円)に達した。今年2月には環境部が台電の「第4接」協和発電所更新計画を承認し、防波堤工事費だけで430億台湾ドル(約2100億円)との見方も出ている。
今後は制限付き入札の割合が高まるとみられ、建設各社は増資による体力強化を進めている。宏華建設は30億台湾ドル(約147億円)の増資で第7接を受注したが、第4接の受注は他社に移るとの見方もあり、建設業界では次の大型案件の行方に注目が集まっている。
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