日韓と造船連携を探る一方、対中貿易で軌道修正 トランプ氏の「休戦」に鉄鋼労組が反発

2025年11月6日、トランプ米大統領がホワイトハウスで中央アジア5カ国の首脳を招いた。(AP)
2025年11月6日、トランプ米大統領がホワイトハウスで中央アジア5カ国の首脳を招いた。(AP)
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米国鉄鋼労働者連盟(USW)をはじめ、国際機械工協会、国際電気工労働組合、国際ボイラーメーカー協会など主要労組が8日、中国船舶への港湾利用料徴収を停止する決定を厳しく非難する共同書簡を発表した。「中国に略奪的行為を続けるための“無料通行証”を与えた」として、政権への不満をあらわにしている。

しかし、そのわずか一週間前、ドナルド・トランプ米大統領は、中国の習近平国家主席との「貿易戦争の休戦」を祝していた。レアアースの輸出規制解除を実現し、米国産農産物の大量購入を取り付けた「偉大な合意」だと誇示。さらに、11月10日からは中国製コンテナクレーンとシャーシへの関税を停止し、中国国旗を掲げた船舶や、中国企業が建造・運航する商船に対して港湾利用料を免除する措置も含まれていた。

一見すると穏やかな合意のように見えるが、北京に報復措置の中止を約束させるための「取引」でもあった。だが、この決定は米国労働界の中心に激しい反発を招き、ワシントンの政権基盤を揺るがす事態となった。日々、造船所や製鉄所で汗を流す労働者たちにとって、それは「休戦」ではなく「降伏」そのものに映ったのである。

「今、必要なのは信頼だ。だが与えられたのは不確実性だ」

労働組合連盟は、USTR(米通商代表部)のジェイミソン・グリアー氏宛ての書簡で、「政府の決定に対し、最大限の失望を表明する」と強く抗議した。この書簡は、USTRが協定の詳細についての意見募集を締め切る直前(東部時間7日午後5時)に提出されたもので、裏切られた労働者の怒りと不安がにじむ。ブルームバーグは、労組が今回の決定を「かつて世界をリードした米造船業の再興を損なうもの」と断じたと伝えている。

労組側は、「政府の措置は、信頼と長期的な計画が最も求められる時期に不確実性をもたらした」と批判。海洋産業再生を掲げる政策の下で、企業や労働者が資源を投じてきた努力が水泡に帰すと訴えた。書簡では、「第301条措置の一時停止は、中国に“無料通行証”を与えるに等しい」とも記されている。

「301条」の継承とトランプの政治的リスク

ここでいう「301条」とは、1974年通商法の第301条を指す。不公正貿易を行う国に対し、関税などの報復措置を講じる権限をUSTRに与えるものだ。皮肉なことに、中国の造船・物流分野における不公正行為を最初に調査したのは、トランプ氏の前任であるバイデン政権である。

当時、五大労組が連名で請願し、中国政府が巨額の補助金によって市場競争を歪め、米国の商業造船業を壊滅状態に追いやり、国家安全保障を脅かしていると訴えた。これを受けて開始された調査を、トランプ氏は大統領復帰後も継続し、日本や韓国といった伝統的造船大国との協力を模索。「造船連合」を形成して中国の影響拡大を抑える構想を描いていた。

ブルームバーグは、米造船業の再建が超党派で共有される目標であり、先週の上院公聴会でも海洋産業支援法案が議論されるなど、議会の関心が高まっていたと指摘する。今回の方針転換は、そうした議員や産業界への打撃であり、同時に「トランプの貿易政策が再び急変した」との懸念も呼んでいる。

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