李忠謙コラム:崩壊寸前の「対中包囲網」 西側首脳の相次ぐ訪中とトランプ氏のダブルスタンダードが招く危機

2026年1月16日、北京の人民大会堂で中国の習近平国家主席と会談するカナダのカーニー首相。(写真/AP通信提供)
2026年1月16日、北京の人民大会堂で中国の習近平国家主席と会談するカナダのカーニー首相。(写真/AP通信提供)

ここ数ヶ月、国際外交の舞台において最も活況を呈しているのは、ワシントンでもブリュッセルでもない。北京の人民大会堂だ。

昨年12月のマクロン仏大統領を皮切りに、今年1月には韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領、アイルランドのマーティン首相、カナダのカーニー首相、フィンランドのオルポ首相、そして英国のスターマー首相が相次いで訪中した。今月(2月)下旬にはドイツのメルツ首相、そして4月には満を持してトランプ米大統領の訪中も控えている。

英国・カナダも「雪解け」へ、過去の懸案は棚上げに

注目すべきは、英国のスターマー首相にとって、これが英首相として8年ぶりの訪中であるという点だ。ロンドンでの「スーパー大使館」建設計画を巡る論争や、数年前の香港民主派弾圧(収監中の黎智英氏の問題を含む)といった懸案事項は、もはや英中関係の障害とはみなされていないようだ。カナダのカーニー首相も同様に、北京で習近平国家主席と握手を交わした。かつてファーウェイ副会長・孟晩舟氏の逮捕に端を発した「人質外交」の記憶は、静かに幕引きされたかのようだ。

法國總統馬克宏(右)獲得習近平高規格接待。(美聯社)
フランスのマクロン大統領(右)が、習近平氏から異例の高い格式での接遇を受けた。(写真/AP通信提供)

トランプ氏の「中国パラドックス」と二枚舌

戦略的自律を掲げるマクロン氏や、最近「ドイツは米国の属国ではない」と公言したメルツ氏はさておき、米国の最も親密な同盟国であるカナダや英国までもが中国に秋波を送っている。数年前に国際社会で叫ばれた「デリスク(リスク低減)」戦略は、もはや過去のものとなりつつある。

興味深いのは、スターマー氏の訪中に対するトランプ氏の反応だ。記者の問いに対し、トランプ氏は「彼らの行動は非常に危険だ」「カナダが中国とビジネスをするのはさらに危険だ」と警告した。しかし、そのトランプ氏自身も4月の「米中首脳会談」を着々と準備している。米国が大豆を売り、NVIDIAのAI半導体禁輸を解除し、中国とのビジネス拡大を目論むことは「危険」ではないというのだろうか。

このトランプ氏のあからさまなダブルスタンダードとも言える「中国のパラドックス」について、ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ氏の貿易戦争に屈しないという習近平氏の賭けが「初期の成果を上げている」と分析する。特に北京は、トランプ政権の対中規制に同調する国に対し、レアアースの輸出規制というカードをちらつかせている。これは米国だけでなく全世界への脅しだ。

かつてワシントンの「対中牽制」に同調していた国々は、ある現実に気づき始めた。米国を怒らせれば関税という制裁が待っているが、中国を怒らせても同様に経済的損失を被るという事実だ。北京の強気な姿勢の背景には、「各国は対米依存のリスクをヘッジ(分散)するために、中国との関係強化を求めざるを得ない」という冷静な計算がある。 (関連記事: 米国、「米中首脳会談」に向け対中軟化へ?新戦略から「台湾」消失の衝撃 「トランプ2.0」新国防戦略が描く米中台の激変シナリオ 関連記事をもっと読む

2026年1月29日,英國首相施凱爾在北京出席中英企業家委員會會議。(美聯社)
2026年1月29日、英国のキア・スターマー首相が北京で開催された中英企業家委員会の会合に出席した。(写真/AP通信提供)

米国の亀裂がもたらす中国の「外交的配当」

ブルッキングス研究所ジョン・ソーントン中国センター長のライアン・ハス氏はこう指摘する。 「トランプ氏が伝統的な同盟国との亀裂を深めるにつれ、中国は外交的利益(配当)を享受している。米国と同盟国の溝が深まることで、北京は外交において余裕を持って振る舞うことができる。北京は各国を取り込むために譲歩する必要はない。ただ『予測可能』でありさえすれば、核心的利益において強硬な姿勢を崩さずとも良いのだ」

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