評論:「反中カード」が裏目に?頼清徳総統、孤立深める 米国も北京に配慮の姿勢

2025-07-30 13:00
総統の頼清徳氏は内外から圧迫され、大罷免が完全に封じ込められた後、中南米訪問の予定がまたも米国トランプ政権により阻止された。(写真/頼清徳氏フェイスブックより)
総統の頼清徳氏は内外から圧迫され、大罷免が完全に封じ込められた後、中南米訪問の予定がまたも米国トランプ政権により阻止された。(写真/頼清徳氏フェイスブックより)
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泣きっ面に蜂の状況で、頼清徳総統は内外からの圧力にさらされている。大規模リコールで完敗した直後、中南米への外遊も途中で足止めされた。『フィナンシャル・タイムズ』が報じたところによれば、その原因は米国のトランプ大統領が中国の習近平国家主席との会談を優先し、頼氏のニューヨーク経由を拒否したことにあるという。トランプ氏は米中首脳会談のために北京に配慮し、台湾の利益を顧みなかった格好だ。賴政権は今なお国民に「反米感情を抱くな」と求めているが、米国への疑念は依然として「認知戦」なのだろうか。

大規模リコールは無駄骨、大統領の孤立を拡大

頼清徳総統が仕掛けた大規模リコール運動は、1年を費やした憎悪動員の末に台湾社会を分断しながらも、結果は惨敗に終わった。これは事実上、「頼・卓体制」に対する不信任投票である。頼氏は数日間沈黙を守り、「無差別リコール」という戦略の誤りを認めず、またこれを藍緑政党の対立とは位置付けなかった。公開謝罪すら避け、責任をすべてリコール推進団体に押し付けた。そして今や、中南米友好国への外遊ですら壁に突き当たった。

頼氏は当初、8月に米国ニューヨークを経由して中南米の友好国であるパラグアイ、グアテマラ、ベリーズの3カ国を訪問する予定だった。しかし総統府は風災などを理由に「当面は出訪の予定なし」と発表した。『フィナンシャル・タイムズ』は真相を明らかにしており、北京の強い抗議によりトランプ政権が通過を認めなかったことが背景にあると伝えた。頼氏は米側がニューヨーク経由を許可しないと知った後、外遊を取りやめたという。総統府は「発表していないものを取り消した事実はない」とし、匿名の情報提供者が台米関係を挑発していると主張したが、こうした釈明自体が「ここに金はない」と言うが如く、自ら状況を裏付ける結果となった。

アメリカ大統領トランプの関税政策、賴清德の団結十講が罷免の不確定要因となる。(合成画像/AP通信)
アメリカ大統領トランプの関税政策、賴清德の団結十講が罷免の不確定要因となる。(合成画像/AP通信提供)

トランプの利己主義、台米関係に危機

陳水扁氏、馬英九氏、蔡英文氏の3人の前総統と比べると、頼清徳総統の外遊はまさに波乱続きである。頼氏は就任から100日間、一度も海外訪問を行わず、ようやく11月に太平洋の3カ国の友好国を訪問することになったが、経由地はハワイとグアムに限られ、わずかな慰めとなったにすぎない。教皇フランシスコの葬儀への出席も申請したが、バチカン側の「別の考慮」により実現せず、代わりに陳建仁前副総統が特使として派遣された。今回の中南米3カ国訪問計画も、パラグアイ大統領が先に公表していたが、米国での経由が拒否される事態となり、北京が頼氏の動向を厳しく監視していることが浮き彫りとなった。この1年余り、頼氏の外遊はまさに「寸歩難行」である。

トランプ氏にとって、スローガンであるMAGA(アメリカを再び偉大に)は最優先課題であり、「トランプ・習会談」の実現はその重要なサブ目標となっている。香港メディア『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は、米中首脳会談が早ければ10月、韓国で開催されるAPEC首脳会議の前後に実現する可能性があると報じた。米中首脳会談、貿易交渉、レアアース資源をめぐる駆け引きなどは、トランプ氏の金銭的な価値観において、頼総統の米国経由訪問よりもはるかに重みがある。

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