米中関係の安定化を模索する中、アメリカのトランプ大統領が、台湾の賴清徳総統のニューヨーク立ち寄りを拒否したことが明らかになった。英紙『フィナンシャル・タイムズ』は29日、ホワイトハウスの決定により、ワシントンの台湾支持派が懸念を強めていると報じた。彼らは、トランプ氏が習近平国家主席との会談を望み、中国に対して軟化しているのではないかと警戒している。
『フィナンシャル・タイムズ』29日の報道によれば、賴総統は8月に米国を経由し、パラグアイ、グアテマラ、ベリーズの3カ国を訪問する計画だった。これらはいずれも台湾と正式な外交関係を持つ中米の友好国である。しかし関係者3人の話として、米政府は賴総統に対し、訪問中にニューヨークに立ち寄ることはできないと通告したという。賴総統はニューヨーク滞在中に保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」のイベント参加を希望していたが、ホワイトハウスの判断で計画は実現不能となった。ダラス訪問も検討されていたが、ニューヨークのみが拒否されたのか、米国経由全体が制限されたのかは不明である。
米政府高官の一人は「状況改善に向けて努力している」と述べ、行程は正式に中止されていないと説明した。しかし、英『デイリー・テレグラフ』や『ロイター』は、トランプ氏によるニューヨーク拒否の後、賴総統が南米訪問を延期または中止したと報じた。台湾総統府の郭雅慧報道官は「台湾南部の風災復旧や、米台間の関税調整、地域発展を考慮し、短期的に海外訪問の予定はない」とコメントした。

ワシントンの台湾経済文化代表処も同様の声明を発表し、賴総統に直近の訪米計画はないと強調した。米シンクタンク「ドイツ・マーシャル基金」で両岸問題を専門とするボニー・グレーザー氏は、今回の米国の決定は「トランプ氏が米中交渉や首脳会談の準備を進める中で、北京を刺激したくないという意図を示している」と分析する。
グレーザー氏はまた、この判断が、トランプ政権第1期に台湾への武器販売を遅らせた事例や、2018年に国務省の黄之瀚副補佐官が台湾を訪問した際、トランプ氏が「激怒」した過去を想起させると指摘した。「トランプ氏は中国の圧力に屈してはならない。米台関係が交渉可能だと示すことは、中国に台湾問題での圧力を助長させ、抑止力を損なう」と述べている。
米政府関係者によれば、トランプ政権は現在、中国との貿易交渉を優先しており、対立を避けたい考えがあるという。スコット・ベッセント財務長官と中国の何立峰副総理は28日、ストックホルムで第3回協議を開始。今年5月、北京は米国向け希土類輸出を減速させたが、その後もトランプ政権は強硬な対中措置を控えている。 (関連記事: 台湾・賴清徳総統、米国経由で中南米歴訪へ トランプ・習会談が日程に影響も? | 関連記事をもっと読む )
シュライバー氏とペロシ氏、決定に異議
アメリカ国防総省でインド太平洋安全保障担当次官補を務め、現在はインド太平洋安全保障研究所理事会会長を務めるランディ・シュライバー氏は、ホワイトハウスが賴清徳総統のニューヨーク訪問を阻止した決定は、過去に米政府が台湾問題で北京を刺激することを避けてきた対応を思い起こさせると語った。シュライバー氏は「もしこれが北京を喜ばせるための行動なら誤りであり、むしろ自らを困難な立場に追い込むだけだ」と指摘した。