民進党立法院党団総召集人・柯建銘氏は、早い段階から大規模リコールを呼びかけ、緑陣営のリコール戦線の「第一人者」とされてきた。民進党立法委員・沈伯洋氏はネットでの影響力を生かし、世論を盛り上げる役割を担った。スタイルは異なれど、二人は共に今回のリコール戦を描き出した立役者である。
長年「老柯」と呼ばれ、ベテラン政治家として台湾政界で存在感を放ってきた柯建銘氏は、常に神がかった戦略を持つと評されてきた。だが今回は、藍と白(国民党と民衆党)が連携して行政予算を凍結し、法案を阻止する状況に対し、柯氏が「41人の藍陣営議員のリコール」を呼びかけたことが「的外れ」と批判され、誤算が露わになった。なぜ柯氏は、戦いの中でさらに戦いを仕掛けるような方針を掲げたのか。

大リコールの旗手、周囲は愚かと笑う
リコール過程では、柯建銘氏の発言が何度も物議を醸した。5月末、氏はFacebookで「リコール投票日は7月26日と8月23日」と予告。中央選挙委員会が正式に告示する前だったため、藍陣営から「内部情報を握り手続きを干渉したのでは」と疑われた。柯氏は「選罷法に基づく計算だ、漏洩も圧力もない」と反論。さらに「リコール成功後は刑法第100条で青陣営議員に対抗する」と発言し、強い反発を招いた。
党中央とリコール団体の摩擦、現場での激論
柯建銘氏は「公民団体は民進党に報告する必要はない。自らリコールムードを作るべきだ」とも語った。党内会議では「党中央は連署の責任を果たせ」とも激しく批判。これにはリコール団体から喝采が起きたものの、会議の場は気まずい空気に包まれ、曹興誠氏が仲裁に入ってようやく場が落ち着いたという。
柯氏はなおもリコール支持を訴え、側近の周軒氏がリコール団体と密に連絡を取り、若き戦士のように振る舞った。柯氏自身もFacebookを頻繁に更新し、国民党議員と論戦を繰り広げた。
沈伯洋氏、リコールを『民主防衛戦』に
一方の沈伯洋氏は、柯氏とは違うスタンスをとった。法学博士で情報戦と民主防衛を研究する氏は「黒熊学院」を設立し、防衛教育を推進。制度やデータを駆使してリコールの正当性を訴え、「リコール成功の成否は立法院の攻防に直結する」と主張。政党対立を超え、リコールを「民主防衛戦」と位置づけた。

大リコールの結末 柯建銘氏、読み違えか
今回の大規模リコールで、柯建銘氏と沈伯洋氏はそれぞれ役割を果たし、戦術を先導した「老将」として動いた。沈氏は論説で正当性を支え、裏方としても調整を担った。半年以上続いたこのリコール行動は、どんな成果を残したのか。リコールされた議席の数なのか、それとも在野勢力への抑止力なのか。
一部の野党から「狂気」と評された柯氏だが、長年彼と向き合ってきた国会関係者は「彼は狂気すら計算に入れている」と語る。結果的にリコールは失敗し、社会に分断を残した。だが、その代償を払ってまで柯建銘氏が満足する理由は、いまだ誰にも分からない。
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