日本初の女性首相となった高市早苗氏が今週就任した。民進党政権は歓迎の意向を示し、今後の日台関係に関心が集まっている。一方で、トランプ米大統領による「貿易戦争」や国内の米価・物価高、外国人移民をめぐる排外感情の高まりなどを抱える中、高市新内閣が日本を将来に導けるか注目が続く。
高市氏はこれまで靖国神社への参拝を重ね、日台友好を支持してきた経緯があり、北京側が問題視する可能性がある。日本の政治学者は、仮に民進党政権が「台湾に有事あらば日本が助ける」との期待を醸成しても、高市氏には中国と厳粛な外交対話を進める力が乏しく、台湾の安全にとって「決して好材料ではない」とみている。
日本新政府は自滅を招くか
上智大学国際教養学部教授で、ハーバード大学元日米関係訪問研究員の中野晃一氏は『風傳媒』の取材に、「高市氏のチームはほぼ台湾のチームだ。台湾系ロビーに関わる日本の中核メンバーの多くが自民党の新たな指導部や高市内閣に入り、中国本土に通じる人材は周縁化されている。まるで日本が台湾とは外交関係を持ち、中国とは持たないかのように見える」と指摘した。
中野氏は、民進党政権は歓迎するだろうが、こうした偏りは前例のない深刻さで、北京は重大な挑発と受け止める恐れがあると述べる。さらに「高市氏は外交・安保の実務経験が乏しく、自ら火遊びをしている自覚がないのではないか。その結果、台湾と日本は一段と大きなリスクにさらされる」とも語った。
同氏は、高市氏の挑発的な日台接近は台湾のリスクを高めるだけだとし、新政権は中国と向き合う厳粛な外交対話が難航する可能性が高いとの見方を示した。また、日本維新の会の支援があっても、参院・衆院ともに過半を欠く少数政権である点も指摘した。

右派のイメージを拭えない
歴史認識をめぐっては、中野氏は「昨年の総裁選で敗れた際、高市氏はより公然と『極右』『歴史修正主義者』的な見解を示した」と言及。一方、今回の総裁選では自らを「穏健な保守」と位置づけ、靖国参拝については「適切に判断する」と述べ、秋季例大祭での参拝は見送った。ただ「説得力には欠ける」とし、多くの有権者は高市氏が支持層を喜ばせるため「本性を現す」局面を注視しており、「一年で見解を改めた」とは受け止めていないと述べた。
また、対米関税をめぐり、高市氏が選挙戦で日米の「対等関税」協定の再交渉に言及した点について、中野氏は「トランプ大統領と再交渉してより良い協定を得られると信じる人はおらず、選挙向けのレトリックにすぎない」との見解を示した。
加えて、高市氏が減税と防衛費増額を同時に掲げたことについて「理屈に合わない。日本を戦時経済へ転じさせるかのようだ」と比喩。新政府が意図的に借入・歳出を拡大し、膨張する公的債務を恒常的なインフレに吸収させようとしていると批判した。

反移民の姿勢が経済界の懸念に
直近の参院選や今回の自民党総裁選では、外国人移民受け入れが争点化。右派系の新党(参政党など)が伸長し、自民党執行部も立場の表明と政策修正を迫られた。中野氏は、高市氏による「排外感情の喚起」に対して経済界が「深い懸念」を抱いているとし、「必要な労働力の確保を一段と難しくしかねない」と警鐘を鳴らした。
少子化が進む中で、高市氏が移民政策を大きく転換することは難しく、経済への影響は深刻になり得ると指摘。「経済移民」を含む外国人を「犯罪者扱い」し、排外感情を広げることで責任回避を図るのは、安上がりな政治的利益を狙うものだと批判した。
そのうえで中野氏は、こうした動きが直ちに政策全体を大きく変えるとは限らないが、「日本社会の空気を毒し、在留外国人や観光客が歓迎されていないと感じる土壌を生む」可能性があると懸念を示した。
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