台湾積体電路製造(TSMC)の2025年第3四半期業績が再び過去最高を更新し、台湾加権指数を支える「大黒柱」として存在感を示した。米国が企業決算シーズン(いわゆる「スーパー決算月」)に突入するなか、台湾企業の決算発表も相次ぐ見通しだ。為替の影響が一時的に落ち着いたこともあり、全体として堅調な業績が期待されている。
TSMC、第3四半期の売上高は9899億台湾ドル EPS17.44元で過去最高を更新
半導体受託製造の世界最大手、TSMCは19日に第3四半期の決算説明会を開催した。AI(人工知能)や高性能計算(HPC)、自動車向け半導体の強い需要に支えられ、連結売上高は9899億2000万台湾ドル(前年同期比30.3%増、前期比6%増)を記録。純利益は4523億台湾ドル(同39.1%増、前期比13.6%増)となり、1株当たり利益(EPS)は17.44元と過去最高を更新した。
粗利益率は59.5%、営業利益率は50.6%に達し、想定を上回る為替水準とコスト改善、生産能力の高稼働が寄与した。実際の粗利益率は、事前予想の上限をさらに200ベーシスポイント上回った。
海外コストが利益を圧迫も 「通年ドル建て売上は30%台半ばの成長へ」
一方で、海外拠点の人件費増が利益率を一部押し下げたものの、事業規模の拡大により通年では影響は限定的と見られる。下半期で約2%、年間では1〜2%の圧縮にとどまり、今後数年の初期段階では2〜3%、後期でも3〜4%の範囲と予測されている。
TSMCの魏哲家董事長(CEO)は会見で、「通年のドル建て売上高は前年比30%台半ばの成長を見込む」と述べ、依然としてAI需要が旺盛であると強調した。
3ナノが売上の23%、2ナノ量産目前
売上構成比を見ると、3ナノプロセスが23%、5ナノが37%、7ナノが14%を占め、先端プロセス全体でウェハー売上の74%を占めた。2ナノプロセス(N2)は今四半期中に量産入りする予定で、性能と消費電力をさらに向上させた改良版「N2P」も投入される。
2025年の設備投資額は400〜420億米ドルと見込まれ、従来予想(380〜420億ドル)より上限寄りとなった。うち約70%が先端プロセスに、10〜20%が特殊プロセスに、残りが先進封止・テスト・量産分野に振り向けられる。積極的な投資姿勢は、長期成長の可能性を示している。
第4四半期売上高は322〜334億ドル 営業利益率は最大51%へ
関税政策の不透明感など、リスク要因は依然として残るが、TSMCは第4四半期の売上高を322〜334億米ドルと予測。1ドル=30.6台湾ドルで換算すると前期比では1%減となるが、前年同期比では22%増。粗利益率は59〜61%、営業利益率は49〜51%のレンジを見込む。
台北株式市場を牽引 資金はAI関連に集中
TSMCの株価は連日最高値を更新し、加権指数を史上最高の2万7768.27ポイントまで押し上げた。市場全体では「千金株(株価1000元超)」が23銘柄に達し、うち8銘柄が2000元を突破。
AI(人工知能)関連銘柄への資金集中が続くなか、OpenAIとの提携が報じられた企業の株価は軒並み急騰。テクノロジー以外の米小売大手ウォルマートまでもが史上最高値を更新し、「AIなしでは悲哀しか残らない」と揶揄されるほどの熱狂を示している。
米中対立の再燃と仮想通貨市場の波乱
米中対立は、中国がレアアース輸出をさらに制限したことを受けて再燃。トランプ大統領は追加関税で報復し、仮想通貨市場では24時間以内に192億ドル相当のポジションが清算される「史上最大のロスカット」が発生した。
ただし市場の混乱は長く続かず、米株主要3指数(ダウ・S&P500・ナスダック)は20日移動平均線を一時割り込んだものの、60日線で下支えされ反発。フィラデルフィア半導体指数も20日線で下げ止まり、依然として強気基調を維持している。
TSMCの堅調な業績とAIを軸とする投資熱は、台湾経済にとって「護国神山」と「シリコンシールド」をさらに強化する追い風となりそうだ。
出典:『先探投資週刊』
編集:柄澤南 (関連記事: インテルとTSMC、合弁出資で最大20%株式保有の可能性 協議中の4つのシナリオとは | 関連記事をもっと読む )
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