事情に詳しい関係者によれば、10月13日から17日にかけて台湾軍は、澎湖の北西・南方、左営以西、基隆東北の各海域で年次演習「海強操演」を実施している。この間、中国軍無人機が台湾南西空域で海空目標の偵察を行い、東部海域の中国艦隊と情報を共有して合同訓練を実施しているのを確認した。また、浙江省・象山東北のT字型禁航区では、上陸・輸送を想定した演習が行われた可能性がある。中国艦艇は14日に13隻へと急増し、15日には8隻に減少した一方、航空機の活動は日ごとに増えている。台湾海峡は常時、中国軍の「連合戦備警巡」などの演習態勢へ移行し得る状況にあるとの懸念を示した。
まず、『自由時報』10月12日付は、関係者の話として今年の「海強操演」が13日から17日に行われると報道。海巡署の安平級巡視船も台湾軍の指揮系統に組み込まれ、実兵演練と模擬弾による検証で「平戦転換」能力を点検すると伝えた。漁業署の射撃通報では、今月、台湾周辺4カ所の靶場で機・艦の実弾射撃を実施するとしている。靶場は澎湖南方、基隆東北方、高雄・左営以西、澎湖北西の外海。台湾軍は13日午前から高雄・屏東以西に演習海域を設定し、P-3C対潜哨戒機とS-70C対潜ヘリを投入して対潜演習を行う。
また、『中時電子報』によると、「聯合截撃作戦演練」では、第124艦隊(高雄・左営港)、第146艦隊(澎湖・馬公港)、第168艦隊(宜蘭・蘇澳港)、第131艦隊(基隆港)が無線封止のもと、突発事態に備えた計画を立案。台湾海峡周辺で起こり得る事象への対応を演習で検証する。
陸文浩氏のこれまでの観察では、2022年8月4~7日に中国軍が台湾周辺で6つの遠程ロケット発射・海空合同訓練区域を宣言して以降、これらが中国艦艇の恒常的な展開海域となっている(関連記事:陸文浩氏の見解―双十節前夜の中国軍「常態化」連合戦備警巡)。今回の台湾軍演習は、中国軍が以前設定した第3海空合同訓練区域(台湾東北海域)と第6同区域(台湾南西)に重なる。両海域を重視する背景には、主要軍港の防護があるとみられる。
防衛当局の情報では、「海強操演」前日の10月12日0850~2030、中国軍の主力機・無人機計10機が浙江・福建の境界付近から台湾海峡西側、金門以南の空域に進出。このうち5機が海峡北部と金門以南で中間線を越え、金門以南から台湾南西空域、鵝鑾鼻以南を経て蘭嶼以東へ至り、台湾防空識別圏(ADIZ)東南縁で折り返した。
続く13日0705~2100には、主力機・無人機計7機が浙江・福建の境界から福建・東山南東にかけて海峡西側で活動し、3機が東引東北および金門以南で中間線を越えた。金門以南から澎湖南西、台湾南西空域を経て鵝鑾鼻以南へ抜け、蘭嶼以東、緑島以東の北方、台東以東の空域まで進出して折り返している。
中国機は、金門以南から澎湖南西、さらに南側を経由して台湾南西空域、鵝鑾鼻以南の空域で行動。飛行経路と機数から推測すると、高高度無人偵察機ではない無人機が、13日以降、澎湖北西や南方、左営以西、屏東以西などの海域で実施される海空目標監視に従事したとみられる。
また、中国機は鵝鑾鼻以南からADIZ東南空域を北上し、11~13日に蘭嶼以東、台東以東の空域で活動するヘリコプター部隊と合流。これにより、中国軍が台湾東南海域に常時、排水量3,000トン超の艦艇を展開している可能性が高い。このエリアは中国軍の第5海空合同訓練区域で、西太平洋から巴士海峡、南シナ海へ至る航路の防護を担っていると推測される。
無人機が西から東へ飛行して中国艦隊の行動海域へ向かい、台湾南西方面の海空情報を艦隊側に伝達したうえで、合同訓練を行っているとみられる。
10月16日午前に防衛当局が公表したところでは、15日に中国機と無人機計2機が台湾南西から南方を経由し、台東以東の空域へ進出。筆者の検証では、直近3日間で中国艦載ヘリ(直-9対潜ヘリと推定)1機が台東以東で活動し、少なくとも排水量3,000トン超の艦艇が同海域で行動している可能性がある。さらに、中国機1機が金門以南、澎湖西南から台湾南西、鵝鑾鼻以南へ回り込み、東北方向へ進出。ADIZ東南縁を経て蘭嶼以東、緑島以東を北上し、台東以東の空域で活動して中国艦隊との合同訓練に参加したとみられる。