トップ ニュース 早稲田大学・岡本隆司教授が語る「中国史の長い影と習近平政権」
早稲田大学・岡本隆司教授が語る「中国史の長い影と習近平政権」 日本記者クラブの講演で、早稲田大学の岡本隆司教授が中国の歴史的構造から見た習近平政権を解説した。
日本記者クラブは2025年9月25日、「中国で何が起きているのか」第30回を開催し、早稲田大学の岡本隆司教授が登壇した。東洋史・近代アジア史を専門とする岡本氏は、中国の歴史的特質を踏まえ、現在の中国像をどう捉えるかを論じた。
岡本氏はまず、歴史家として「いまの政治状況に直接答えることはできない」と断りつつ、過去の構造から現在を読み解く重要性を強調した。そもそも「中国」という呼称や概念は長い時間の中で大きく変容しており、明から清へ至る過程を理解せずに「中国史」を一括することの危うさを指摘した。
続いて、14世紀と17世紀の世界的危機を背景に、明朝が商業を抑え、人民を直接支配する体制を築いた経緯を説明。とはいえ民間経済は体制の枠外で拡大し、密貿易や倭寇の活動を通じて地域社会が独自に活気づいた結果、「中華帝国」と呼べる広域の経済圏が形づくられたという。
清代に入ると、銀を基盤とする世界貿易の拡大で人口が急増し、各地域が有機的に結びついた。一方、19世紀以降は列強が各地に直接浸透し、分裂の危機に直面。これへの反作用として「中国を一つにまとめる」というナショナリズムが芽生え、辛亥革命から中華民国、さらに共産党政権の成立へと至った。岡本氏は、「『中国は一つ』という理念はなお十分に具現化されておらず、それが現在の政治体制の根底に響いている」と述べた。
質疑では、習近平国家主席の強権的体制にも話が及んだ。岡本氏は、胡錦濤以前の集団指導体制は「中国らしくなかった」とした上で、習近平を「久々に中国らしいトップ」と評した。統制強化の背景には「社会の遠心力が強まり、分裂への危機感が高まったこと」があると分析し、仮に別の指導者でも大きな流れは大差なかった可能性が高いと指摘。また、中国が国民国家の枠組みに完全に馴染むのは難しく、地域ごとの伝統経済が資本主義と結びついて発展する構造が続いていると述べた。
台湾や南シナ海の領有権根拠を問われると、「『固有の領土』という言い回し自体、歴史的には根拠が薄い」と回答。歴史的事実と現代の国際規範には大きな隔たりがあるとし、中国の近代以降の歩みを「多元的な社会をいかに一つに束ねるかという試みの連続」と位置づけた。そのうえで、習近平政権の掲げる「中華民族の復興」もその延長線上にあるとして締めくくった。
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