トランプ氏が提示した「新中東夜明け」構想とは? 和平後も続く地政学の緊張

2025年10月13日、アメリカのトランプ大統領がエジプトで中東和平サミットに出席し、イスラエルとハマス間のガザ地域での戦争終結を試みる。(写真/AP通信提供)
2025年10月13日、アメリカのトランプ大統領がエジプトで中東和平サミットに出席し、イスラエルとハマス間のガザ地域での戦争終結を試みる。(写真/AP通信提供)
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ガザ地区で停戦が成立し、人質が解放された後も、アメリカのドナルド・トランプ大統領は歩みを止めなかった。彼が見据えるのは、さらに遠い目標――中東をほぼ一世紀にわたって苦しめてきた暴力の連鎖を終わらせることにある。トランプ氏は「戦争が地域秩序を再構築した」と強調し、「新しい中東の歴史的夜明けが訪れた」と宣言。イスラエルとアラブ諸国、さらにはイランまでも和解させようとする包括的な和平構想を高らかに打ち出した。

10月14日付のウォール・ストリート・ジャーナルは、これを「劇的な政治的ギャンブル」と形容した。盟友は冷ややかに見守り、敵対国は一切譲歩せず、首脳会談で署名された和平合意ですら「まるでメロドラマの脚本だ」と揶揄された。
商人出身のトランプ氏は今回、果たしてその手腕で百年の宿怨を解きほぐすことができるのか。それとも、再び歴史の罠にはまり込むのか。

新中東の歴史的な黎明

長期にわたるガザ戦争が終結した直後、アメリカのドナルド・トランプ大統領はすぐさま次の、より壮大で、より困難な目標に視線を移した――中東の包括的和平である。トランプ氏は、2年に及ぶ戦争がすでに地域の秩序を再構築したと見なし、歴史的な怨念もいったんは棚上げできると踏んでいる。ウォール・ストリート・ジャーナルは、この構想がトランプ氏らしいスタイルをそのまま踏襲していると指摘する。すなわち、型破りで、リスクを恐れず、ドラマ性に満ちた手法である。人質救出の際に見せた異例の外交アプローチと同様、今回もトランプ氏は従来の中東外交の発想を打ち破り、自らのやり方で歴史を書き換えようとしている。

10月13日、トランプ氏はイスラエルでこの壮大なビジョンを提示した。中東を約一世紀にわたり苦しめてきた暴力の連鎖を断ち切る――それが彼の掲げる目標である。氏は各国にイスラエルとの国交樹立を呼びかけ、今年アメリカが空爆を行ったばかりのイランにさえ和解のメッセージを送った。「過激主義と極端主義のない新たな中東」を築くと宣言したトランプ氏は、人質解放後にイスラエル国会の演壇に立ち、「これこそが新しい中東の歴史的夜明けだ!」と力強く語った。 (関連記事: 《エコノミスト》「中東の新たな火種は米国とイスラエル」 ドーハ空爆でカタール巻き込み、湾岸諸国が新たな後ろ盾探し 関連記事をもっと読む

2025年10月13日、アメリカのトランプ大統領はイスラエルのネタニヤフ首相の国会での演説を聞く(AP通信)
2025年10月13日、アメリカのトランプ大統領はイスラエルのネタニヤフ首相の国会での演説を聞く。(写真/AP通信提供)

ウォール・ストリート・ジャーナルは、トランプ氏の掲げるスローガンに懐疑的な見方を示している。なぜなら、この種の大言壮語は過去に幾度となく挫折を繰り返してきたからである。中東はすでに「壮大な構想の墓場」と化して久しい。ジョージ・W・ブッシュ政権は、イラクの独裁者サダム・フセインを打倒することで民主主義を輸出しようとしたが、結果的に十年以上にわたる反乱と混乱を招いた。ジョー・バイデン政権もまた、停戦を足がかりに「二国家解決」を推進し、パレスチナ国家の樹立とアラブ諸国によるイスラエルとの外交関係拡大を図ったが、これも実を結ばなかった。さらに、1993年に締結されたイスラエル・パレスチナ和平の枠組みであるオスロ合意でさえ、双方の強硬派によって崩壊した経緯がある。

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