米中貿易戦が再燃:中国がレアアース規制で圧力、トランプ氏は一律100%関税で応酬 『エコノミスト』強権は「力は信頼に勝る」

2025年5月、スイスで開かれた米中貿易協議。米財務長官のベンソデ氏(左)、米通商代表のグリア氏(左から2人目)、中国の何立峰副首相(右)、李成鋼・国際貿易交渉代表(右から2人目)が交渉の席に着いた。(AP)
2025年5月、スイスで開かれた米中貿易協議。米財務長官のベンソデ氏(左)、米通商代表のグリア氏(左から2人目)、中国の何立峰副首相(右)、李成鋼・国際貿易交渉代表(右から2人目)が交渉の席に着いた。(AP)
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いったん火が弱まっていた米中貿易戦争が、再び激しくなってきた。先に仕掛けたのは中国だ。習近平氏は「先にエスカレートした側が勝つ」と踏んだかのように、レアアースや電池、重要技術の輸出を絞り、米国のサプライチェーンを直撃。対するトランプ氏も関税100%とソフトウェア輸出の封鎖で応戦し、対立は再加速している。英『エコノミスト』(10月12日号)は、中国が「世界平和の維持」を唱える一方で兵器部品を輸出し、グリーンエネルギーの原料を武器化して欧米企業を驚愕・激怒させていると指摘。真の危機は関税ではなく、双方の強権指導者が「信頼より力のほうが確実」と信じている点にあると論じた。

レアアースを再び「カード化」

数週間の脆い小康状態ののち、応酬は再燃した。『エコノミスト』によれば、双方の官僚が威嚇と応酬を繰り返し、各国の通商相手は改めて二大国依存の代償を思い知らされている。主導権を握ったのは中国だ。

中国は10月9日、新たなレアアース輸出制限を発表。対象は自動車用エンジンから戦闘機部品にまで及び、永久磁石のみならず、精錬やリサイクルの技術輸出も締め付ける。対外経済・税関当局は高性能バッテリーや製造装置の輸出も制限し、一夜にして世界のグリーン産業と軍需産業の“命綱”を握った格好だ。

トランプ氏は即座に反撃。11月1日を最終期限に設定し、制限を撤回しなければ中国製品に一律100%関税を課し、「あらゆる重要ソフトウェア」の対中輸出を禁止すると通告。APECでの習近平氏との会談取りやめも一時示唆(のちに「会う可能性も」と含み)。緊張をさらに高めた。

最も打撃を受けるのは中間にいる外国企業だ。中国は「適正な最終需要家」には輸出許可を出すと約束するが、欧州商会によると、4月以降に欧州企業が申請した141件のうち、承認はわずか19件。許可を待たされるだけでなく、製品設計の提示と引き換えに許可を求められる事例もあり、不満が噴出している。こうした加工・技術輸出の縛りは、各国が対中依存を断ち、自主性を回復するのを阻む狙いがある。重要レアアースの9割超をなお中国が握る現実も、その強気を支える。

西側当局者の見立てでは、中国は4月の最初の制限で手応えを得たという。米自動車・ハイテク各社が供給網混乱で慌て、トランプ氏が一部関税を下げざるを得なかったためだ。もっとも今回の動きは、貿易相手の信頼を改めて揺さぶり、サプライチェーンの脱中国を加速させている。 (関連記事: 米中貿易戦争再燃、トランプ氏の脅威と習近平氏の強硬姿勢が世界経済を揺るがす 関連記事をもっと読む

『エコノミスト』は、多くの国がレアアースの採掘再開・拡大に動き始めたとも指摘する。技術的には難しくないが、環境負荷は大きい。それでも依存を減らす動きが進めば、中国は「グリーン大国」の看板に陰りが出かねない。低炭素技術の核心材料だった鉱物を、対外圧力の道具として武器化したことが、最も“善意のある”はずの輸出品を自ら政治化してしまったからだ。

「平和」を唱えつつ武器部品を輸出する北京

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