台湾出身、知床で唯一の中国語ガイド──Lanさんが語る道東での生活と暮らしの魅力 | 黃信維（コウ・シンイ）

北海道・知床で唯一の中国語ガイドとして活動する台湾出身のLanさんは、現地に定住し、自然観光やエコツアーガイドとして活躍している。《風傳媒》の取材に応じ、知床で暮らすまでの経緯や漁師の夫との日常、地域との関わりについて語った。

台湾出身のLanさんは北海道・知床で唯一の中国語ガイドとして活動し、《風伝媒》の取材に移住の経緯や地域との暮らしを語った。Lan — 台湾出身のLanさんは、北海道・知床で唯一の中国語ガイドとして活動し、《風傳媒》の取材で移住の経緯や地元での暮らしについて語った。（写真／Lanさん提供）

Lanさんが初めて知床を訪れたのは11年前の冬、台湾からワーキングホリデービザで来日し、流氷の上を歩く「流氷ウォーク」を体験するためだった。「当初は1カ月半の滞在の予定でしたが、想像以上に楽しく、多くの友人もできて、この場所に惹かれました」。その後、就労ビザを取得して滞在を続けることとなる。

永住を考えていたわけではなかったが、現在の夫との交際をきっかけに「このまま一緒に歩んでいけるかもしれない」と思うようになり、知床に定住する可能性を意識するようになったという。

「結婚が理由の一つではありますが、それだけではありません。この土地での生活は楽しく、人々は温かく、自然も素晴らしい。多くの地元の方々に支えられてきたので、自分なりに還元していきたい」と語った。

夫は地元の漁師で、Lanさんの周囲にも漁師の知人が多い。「『ホタテ食べる？』と言われ、出てくるのは家庭用の皿に乗らないほどの大きなバケツいっぱいのホタテ。鮭やブリもまるごと渡され、内臓処理もされていません」と笑う。「豪快で、海の人たちの気質がよく表れている」とも。

Lanさんはコロナ前から観光業に携わっていたが、本格的にエコツアーガイドとして活動を始めたのはパンデミック以降だという。「私と接することで初めて外国人と働いた地元の方も多く、『台湾人として恥ずかしくないように』と心がけています」。文化の違いに戸惑うこともあるが、「笑顔でいることを大切にすれば受け入れてもらえる」と話す。

知床の自然についてもLanさんならではの視点を披露する。「冬は雪だけでなく、ロシアから流れてくる流氷も見られる特別な場所です。オホーツク海沿岸でも、これほど広範囲に流氷が広がる地域は珍しい」。夏には野生動物も間近に観察できる。「キツネや鹿が街中に普通にいて、船から海岸で魚を捕るヒグマを見られることもあります。シャチや他の海洋生物とも出会える、自然の宝庫です」。

地域との関わりについても語る。「以前は観光船会社で働いていたため地域活動には参加できませんでしたが、2020年以降、ガイド業を始めてからはビーチクリーンを主催したり、地域イベントに積極的に参加しています」。月1回の清掃活動には近隣の町や企業関係者、地方議員も参加するという。

また、SNSを通して台湾人観光客の習慣やニーズを発信することで、「台湾市場に関心のある地元事業者から相談を受けることも多く、私なりのノウハウを共有しています」と話す。