台湾有事の際、日米はどう対応するか?識者が警鐘:トランプ政権下での台湾支援に不確実性

日本防衛省防衛研究所の元部長、拓殖大学海外事情研究所教授の門間理良氏。(写真/黄信維撮影)
日本防衛省防衛研究所の元部長、拓殖大学海外事情研究所教授の門間理良氏。(写真/黄信維撮影)

日本の防衛省防衛研究所元部長で、拓殖大学海外事情研究所教授の門間理良氏は11日、参議院議員会館で「台湾有事と日本の対応——トランプ政権成立後の中台関係」と題して講演を行った。門間氏は、中国が近年、外交的孤立化、軍事的圧力、経済的浸透の三つの手段を通じて台湾に圧力をかけており、さらにその戦略を強化し続けていると指摘した。

日本防衛省防衛研究所は防衛省直属の公式シンクタンクであり、台湾の国防安全研究院に相当する他国の戦略研究機関に類似している。拓殖大学海外事情研究所は国際政治、外交戦略、安全保障などを研究対象とし、特にアジア太平洋地域と日本の対外政策に焦点を当てる学術研究機関である。

『風傳媒』の質問で、現状やトランプ氏の態度を踏まえ、米国が台湾政策を変更したり最悪の場合台湾を放棄する可能性はあるかと問われた門間氏は、現時点では平時において米国が簡単に台湾を見放すことはないだろうと述べた。台湾は依然として米国にとって重要な戦略上の駒であるためである。しかし一旦台湾海峡で戦争が発生すれば状況は全く異なる可能性があり、中国が台湾に軍事行動を起こした場合、トランプ政権は直接介入せず台湾に自力での対応を求める選択肢もあり得ると警鐘を鳴らした。バイデン政権がインド太平洋地域の戦略バランス維持を重視しているのに対し、トランプ氏の「アメリカ・ファースト」政策は、米国の台湾への約束の不確実性を高める可能性があり、台湾の安全保障や地域の緊張に大きな影響を与えると述べた。

門間氏は、この状況下での日米同盟の影響についても分析した。米国が介入しない選択をした場合、日本が単独で台湾を支援することは困難だとした。物理的条件や軍事能力の観点から、中国に対抗するのは難しく、日本は最悪の事態に備える必要がある。万が一台湾が中国に制圧された場合、日本の南西諸島(沖縄県)が次の最前線となり、安全保障上より深刻な圧力に直面することになるという。

門間氏は、台湾が注視すべき四つの変数として、①米国の対台湾政策、②米中間の技術覇権争い、③中国からの軍事圧力、④経済戦略を挙げた。トランプ氏が再び大統領に就任すれば、台湾への武器売却や安全保障上の約束はより取引的な性質を帯びる可能性があり、台湾はより大きな代償を払って米国の支持を確保する必要に迫られるかもしれない。技術覇権争いにおいては、米国がサプライチェーン再編を進める中、台湾は技術的優位を保ちながら経済利益も確保する必要がある。中国の軍事圧力は今後も高まり、台湾に対する軍事演習が拡大する可能性もあるため、防衛力強化と米日協力の深化は不可欠である。さらに、中国は貿易制限やサプライチェーン競争を通じて台湾に圧力をかける可能性があり、台湾は経済リスク軽減のため市場の多様化を加速させる必要がある。今後数年は、台湾の戦略的方向性にとって重要な期間となる。

同時に、『風傳媒』の質問で、トランプ氏が最近日米安全保障条約を批判したことについて問われると、門間氏は、トランプ氏は第一期政権時にすでに繰り返し日米安保条約を批判していたと述べた。日本が十分な安全保障上の見返りを提供していないとして、米国側は軍事費の大幅増額を強く求めていたという。そのため、安倍政権以降、岸田政権まで日本政府は防衛予算や関連法制の強化を進め、米国からの圧力を緩和してきた。トランプ氏が今後どのように日米安保条約を批判しようとも、日本は自国の防衛整備を引き続き推進する。これは単なる米国への対応ではなく、日本の長期的な国防戦略に基づくものだ。東アジアの安全保障環境の変化に伴い、日本は防衛政策を段階的に調整し、自衛隊の戦力と対応能力を強化し、自国の安全を確保している。

編集:田中佳奈

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