日産追浜工場の買収計画に変化:鴻海、9月に協議から撤退
台湾の電子機器大手・鴻海精密工業(フォックスコン/Foxconn)による日産自動車(Nissan)追浜工場(神奈川県横須賀市)の買収計画が頓挫した。複数の日本メディアの報道によると、数か月にわたる交渉は2025年9月中旬に決裂し、鴻海が正式に協議から撤退したという。

鴻海の提示額は1,000億円超、日産の要求は市場価格の2倍以上
日産は2027年末をもって追浜工場の生産を終了し、施設の売却を検討していた。追浜工場は約54万平方メートルの広大な敷地を有し、鴻海にとっては日本でEV(電気自動車)生産拠点を確立するための戦略的資産と見られていた。

報道によれば、鴻海は今年5月から交渉を開始し、土地・建物・生産設備(開発施設およびテストコースを除く)の買収を希望。さらに一部の従業員の雇用継続も検討していたという。
しかし、日産側が提示した売却額は1,000億円超とされ、これは市場価格(約300〜400億円)の2倍以上に相当する強気の条件であった。鴻海はそれでも「日本でのEV事業拡大」という戦略的重要性を考慮し、高額提示を受け入れる姿勢を見せたが、日産が7月に追浜工場の正式な閉鎖を発表した後、他の潜在的買い手と接触を開始。交渉の進展は徐々に停滞していった。
破談の本当の理由は「価格」ではなく「プライド」
交渉が破談に至った最大の要因は、単なる金銭的な問題ではなかった。日産内部の関係者によると、現経営陣が「外部からの救済を受けた」と見られることを極端に嫌ったことが決定的だったという。
ある関係者は、「鴻海の提案を受け入れるべきだという意見も社内にはあったが、上層部は“フォックスコンに助けられた企業”という印象を避けたかった」と明かす。そのため、ブランドイメージを守るという「企業のプライド」が、最終的に交渉を壊したとも言われている。
鴻海側は交渉の長期化に業を煮やし、9月中旬に正式撤退を決断。これにより、同社が進める「日本でのEV受託生産」構想にも一時的なブレーキがかかることになった。

追浜工場の行方はいまだ不透明
日産広報部は報道に対し、「追浜工場の売却および再活用については、複数の選択肢を検討中であり、外部企業との協議を進めている」とコメント。一部では、中国のEV最大手BYD(比亜迪)が関心を示しているとの噂もあるが、日産はこれを否定も肯定もしていない。
社内関係者も「鴻海以外の候補者との交渉は、現時点で具体的な進展は聞いていない」と述べており、追浜工場の将来像はいまだ霧の中にある。
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