カーティス教授「自民党の統治モデルは行き詰まりにある」 カーティス教授は、自民党の統治モデルが限界に達し、高市新政権は対中・対台政策で試練に直面すると指摘した。(写真/FCCJ提供)
10月6日、日本外国特派員協会(FCCJ)で、米コロンビア大学名誉教授で日本政治研究の第一人者として知られるジェラルド・L・カーティス(Gerald L. Curtis)氏が記者会見を行い、前週末に実施された自民党総裁選と新政権の課題について詳細に分析した。
カーティス教授は、自民党の統治モデルが限界に達し、高市新政権は対中・対台政策で試練に直面すると指摘した。(画像/FCCJ提供) 高市早苗氏が新たな自民党総裁に選出され、事実上次期首相となる見通しの中で、カーティス氏は「今回の自民党総裁選は、これまで見た中で最も退屈な選挙だった」と切り出し、「自民党の統治モデルはもはや行き詰まりにある」と指摘した。
カーティス氏は冒頭、「候補者たちは論争を避け、安全運転に徹した。誰もが『失点をしない』ことを目的とし、どのような日本をつくるかについて語らなかった」と述べた。自民党が長期政権を維持してきた背景には「派閥間の均衡と官僚による政策調整の仕組み」があったとしながらも、「いまやそのモデルは崩壊している。自民党は“消費期限切れ”だ」と厳しく批判した。
また、党員数がピーク時の540万人から現在の90万人にまで減少していることを指摘し、「危機であると理解していながら、誰も抜本的な解決策を示せていない」と述べた。「自民党はかつて国民の意見を吸い上げ、柔軟に対応できる政党だったが、いまや保身と既得権維持が目的になっている」と語った。
高市氏については、「強いリーダーシップを示す象徴として支持を得たが、政策には一貫性がない」と分析。「財政支出の拡大を主張する一方で、財務省の方針を批判している。さらに『政府が金融政策の責任を持つ』と発言しており、これは事実上、日本銀行の独立性を否定するものだ」と述べた。「財務省と日銀の双方を敵に回す危険がある」とも指摘し、「この矛盾が政権の不安定要因になるだろう」と述べた。さらに、「彼女は社会的に保守的で、防衛費増額や憲法改正などを掲げるが、そうした議題は国民の分断を深める可能性がある」と語った。
記者からの質問に答える形で、カーティス氏は外交と安全保障政策についても見解を示した。日中関係への影響を問われ、「高市政権下でも日中関係は慎重に管理されるだろう」としつつ、「中国に強硬な姿勢を示すことで国内保守層の支持を固めようとする危険がある」と述べた。
韓国や歴史問題への姿勢について問われると、カーティス氏は「高市氏のような右派政治家であっても、日米韓の三国連携が日本の安全保障に不可欠であることは理解している」と述べた。「歴史問題や靖国参拝を前面に出すことは政権の優先事項にはならないだろう」と述べ、現実的な対韓姿勢を取ると予測した。
国内政治に関しては、「派閥は弱体化しているが、麻生太郎氏の影響力は依然として大きい。今回の高市勝利も麻生氏の支援が決定的だった」と分析した。「しかし、いまの自民党には若い世代を惹きつける政治家がいない。国民の多くは変化を望んでいるが、誰に期待すべきか分からない状況だ」と述べた。
また、経済格差の拡大についても触れ、「港区を走るフェラーリの数を見るだけでも、格差の拡大は明らかだ。日本は静かにアメリカ型の社会に近づいている」と指摘。「参政党などの新興勢力が支持を伸ばしているのは、現体制への不満の表れだ」と述べた。
記者から国際秩序の変化について質問が出ると、カーティス氏は「戦後の秩序は2025年1月20日、トランプ氏が再選した日をもって終わった」と語った。「アメリカはもはや自由貿易と国際協調の旗手ではなく、ゼロサム的な交渉国家に変わった」と分析。「日本はこの新しい国際秩序の中で、アジアだけでなくグローバル・サウスとの関係を重視し、単なる同盟国ではなく“中核的パワー”としての役割を果たすべきだ」と提言した。
会見の終盤、カーティス氏は「日本はリスクを恐れず、新しい戦略を打ち立てる時期にある」と強調し、「そうでなければ、国としての力を穏やかに、しかし確実に失っていくだろう」と述べて会見を締めくくった。
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