文化部駐日台湾文化センターが主催する台湾の写真家・謝三泰氏の写真展「街頭劇場、火燒島/流麻溝十五號」が、10月3日に東京で開幕した。開会式とトークイベントが行われ、李逸洋・駐日代表をはじめ、台湾と日本の写真・芸術関係者が多数来場。台湾の民主化運動を記録した貴重な写真を通じ、人権と記憶をめぐる対話が展開された。
李逸洋代表「かつての“街頭の戦友”として胸が熱くなる」
開会式で李逸洋代表は、「私は1987年に民進党第2期の宣伝部主任を務め、謝先生とは街頭で共に闘った“戦友”だ」と語り、「東京で再び彼の作品に出会えることに深い感慨を覚える」と述べた。
さらに、自身が1986年の「蓬萊島雑誌事件」で投獄された経験に触れ、「威権時代の弾圧と名誉回復の過程を経て、謝先生の写真に映る街頭の抗争は、まるでその場にいるかのように記憶を呼び覚ます」と語った。
謝三泰氏「自由は与えられたものではなく、人々が勝ち取ったもの」
報道写真家として長年活動してきた謝三泰氏は、解厳前後の台湾社会を記録してきた人物だ。
「反軍人干政、学生運動、520農民運動、労働人権運動など、街頭で起きた出来事をカメラに収めてきた。退職後に過去の写真を整理する中で、若い世代にこの時代を伝えたいと思った。自由の空気は自然に生まれたものではなく、多くの台湾人が命を懸けて勝ち取ったものだ」と語り、当時の社会の緊張感と希望を振り返った。
沈昭良教授「写真は歴史と社会を照らす鏡」
本展のキュレーターを務める華梵大学の沈昭良教授は、展示が謝氏の代表作『街頭劇場』と『火燒島:流麻溝十五號』を中心に構成されていることを紹介。約60点の写真作品と1点の映像作品が展示されているという。
沈教授は「写真は単なる美学的表現ではなく、思想や知識、視点と密接に関わり、社会・政治・文化を映し出す鏡である」と強調したうえで、「台湾文化センターの実体拠点設立10周年の節目に、台日の写真交流がさらに深まることを願っている」と述べた。
写真芸術界の重鎮も多数来場
開幕式と座談会には、東京工芸大学の吉野弘章学長、東京綜合写真専門学校の伊奈英次校長、清里フォトアートミュージアム事務長の小川直美氏、写真弘社の柳澤卓司社長など、日本の写真芸術界を代表する関係者が出席。
さらに日本写真協会、東京都現代美術館、東京都写真美術館の関係者も姿を見せ、会場はまるで写真界の祝祭のような熱気に包まれた。
展覧会情報
展覧会名:謝三泰写真展「街頭劇場、火燒島/流麻溝十五號」
会期:2025年10月3日〜11月3日
会場:文化部駐日台湾文化センター(東京都港区虎ノ門1-1-12 虎ノ門ビル2階)
開館時間:月〜金 10:00〜17:00
休館日:土・日・祝(10月10日休館、11月3日は特別開館)
入場料: 無料
編集:梅木奈実 (関連記事: 台湾の「ネット女神」Iris Huoが別府「ガレリア御堂原」を訪問 アートと温泉の融合に感嘆 | 関連記事をもっと読む )
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