舞台裏》台海の平和は安倍氏の功績か 頼清徳氏が明かす政大「安倍晋三研究センター」の資金源

国立政治大学で「安倍晋三研究センター」設立式。頼清徳総統が「砲火なき平和は安倍氏の先見の賜物」と演説。(総統府提供)
国立政治大学で「安倍晋三研究センター」設立式。頼清徳総統が「砲火なき平和は安倍氏の先見の賜物」と演説。(総統府提供)
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台湾国立政治大学(政大)は今秋、「安倍晋三研究センター」の設立を発表した。外国の政治家の名を冠する研究機関は国内でも稀で、元日本首相・安倍晋三氏の名を掲げるセンターとしては世界初となる。安倍氏の母校・成蹊大学に先んじる形だ。9月21日の設立式には、頼清徳総統や鄭英耀教育部長らが出席し、政界からの後押しを示したこともあって、大きな注目を集めた。

一方で、センターの設立趣旨や位置づけ、資金源をめぐってはネット上で議論が噴出。支持する側は、安倍氏が在任中に日台関係へ多大な貢献を果たし、台湾にとって重要な友人だったと評価。反対派は、政治的に対立を生む状況で、国家資源を用いて外国の元首相を研究対象とする是非を問う声を上げている。

20250921-総統頼清徳が「国立政治大学安倍晋三研究センター」設立大会に出席。(陳品佑撮影)
9月21日、国立政治大学での「安倍晋三研究センター」設立式に、頼清徳総統と安倍昭恵氏が出席。(写真/陳品佑撮影)

センターは何を担うのか

設立式で、政大安倍晋三研究センターの李世暉所長は、2010年以降の日台関係は三つの連携軸に収斂していると説明した。すなわち、「台湾有事は日本有事」に基づく安全保障の連携、自由と民主主義といった価値の共有による安心の連携、そして技術サプライチェーンの安定を重視する安定の連携である。今後、センターはこれらの分野で実務協力を促進し、関連研究と交流を深め、台日間の橋渡し役を担う考えだ。

李所長はあわせて、来年に「安倍政経塾」を立ち上げ、台日双方の若手リーダー育成を進める方針を表明。「安倍晋三台日交流貢献賞」の創設も打ち出した。さらに、安倍昭恵氏の同意を得たうえで、安倍氏の生前資料の展示スペースを設け、センターの恒常的な体制整備を進める計画だという。

李所長は今週、『風傳媒』の取材に対し、頼清徳総統や関係機関の励まし、メディア報道の波及効果でセンターの認知が大きく高まったと述べた。「安倍研究と現代日本研究への関心を押し上げ、当センターの運営に対する社会的な注目と支持の拡大につながっている」と手応えを語った。

当日の「円卓フォーラム」に参加した東京大学東洋文化研究所の林泉忠・特任研究員も『風傳媒』に対し、総統を含む多くの要人が支持を示したことは「非常に意義深い」と評価。「センターの今後には十分期待が持てる」との見方を示した。

20250921-総統頼清徳が「国立政治大学安倍晋三研究センター」設立大会に出席。(陳品佑撮影)
「国立政治大学 安倍晋三研究センター」設立式に出席した頼清徳総統(左)と李世暉所長(右)。(写真/陳品佑撮影)

日本の「松下政経塾」をモデルに

李世暉氏は『風傳媒』に対し、「当センターは安倍晋三の政策と戦略を研究する。現代日本の国家発展や日台関係は、いまなお安倍戦略の枠組みの影響下にある。将来の動向を見通すには、安倍氏の戦略的思考と政策の射程を検証する必要がある」と述べた。 (関連記事: 「女性版安倍」 高市早苗氏が自民党総裁に 対中強硬路線で北京反発、日中関係は悪化するのか 関連記事をもっと読む

東京大学東洋文化研究所の林泉忠・特任研究員も『風傳媒』に、今後センターが実施する「安倍政経塾」は、日本の私立教育機関「松下政経塾」を意識したもので、政治・経済の人材育成を担い、政治志向の若者を訓練する場にしたい考えだと説明した。

「松下政経塾」は起業家・松下幸之助氏が1979年に設立した人材育成機関で、日本の政治・経済界を担う指導者の養成を目的とする。野田佳彦・元首相、前原誠司・前外相、ジャーナリストの矢板明夫氏らが卒業生として知られる。

20250916-風傳媒《下班國際線》番組主持人路怡珍、東京大學東洋文化研究所特聘研究員林忠泉(見圖)、風傳媒国際兩岸中心副主任杜宗熹16日在番組中對談。(柯承惠攝)
東京大学東洋文化研究所の林泉忠・特任研究員。9月中旬、『風傳媒』番組「下班國際線」出演時の資料写真。(写真/柯承惠撮影)
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