台湾・民進党の創党39周年にあたり、党主席の頼清徳総統が全党員向けにメッセージを発表した。だが、「本土派」を掲げて三度目の政権を手にしたにもかかわらず、足元の現実は「潜艦(国産潜水艦)が進まず、関税は下がらず、支持率は伸びず、内外の対立は収まらない」という苦境だ。しかも厄介なのは、この難局の多くを自ら招き、ツケを払わされるのは政権だけでなく国民全体だという点である。
まず蔡英文、次に「国民党・民衆党」 責任の順番
民進党が難局にあるのは確かだ。思い返せば、亡命を余儀なくされた総統候補(彭明敏氏)、三度投獄され26年も選挙の機会を奪われた指導者(施明徳)、初の与党期に巨額汚職疑惑を引き起こし今も尾を引く元総統(陳水扁氏)、二度目の与党期を華やかに運営した一方で、三度目の与党期に数々の「地雷」を残した前総統(蔡英文氏)と、重たい負債は積み上がってきた。発電所をめぐる不祥事、司法の独立性への疑念、党・検察・財界の癒着、スパイ疑惑まで、大統領の手に余る案件もあった。
本来なら三度目の政権運営は「慣れ」で滑り出すはずだが、政治に定番はない。頼清徳氏は総統選に勝ったものの、立法院(国会)は与野党いずれも過半数に届かないネック(いわゆる「ねじれ」)を抱えた。これは頼氏個人だけの責任ではない。第一に問うべきは蔡英文氏の8年間だ。解けぬ課題が積み残され、民進党の「フルセット統治」への有権者の疑念を招いた。第二に問うべきは“藍白”(藍=国民党、白=民衆党)である。両者がそれぞれの路線を優先した結果、(柯文哲氏の)土城看守所への収容という事態に至り、政治不信は一層深まった。
重要なのは、政権が政策でつまずいたとき、他責ではなく自責に立ち返れるかだ。朝令暮改のような混乱は民進党にとって初めてではない。頼氏がどれほど手を尽くそうとも、陳水扁初期に直面したのと同類の難局から逃れることはできない。もし頼氏が陳氏とは異なるやり方で切り抜けようとするなら、その妥当性は一年半もすれば試される。大規模なリコールや政権への“沈黙の抗議”として跳ね返ってくる可能性も、覚悟しておくべきだ。 (関連記事: 夏珍のコラム:龍應台氏が語る「平和」の行方 机上演習では勝てず、台湾社会に広がる不安 | 関連記事をもっと読む )
卓院長は辞任すべきでは? 傅氏夫妻を倒せるのか
結果として、頼清徳総統は辞任せず、立法院の与党幹部の引責辞任も認めず、行政院長の更迭にも踏み切らなかった。人事を動かさないまま「大規模リコールと相次ぐ失策」の後に、1万台湾ドル給付という場当たり的な対策を打ち出した。台風18号(ラガサ)接近時には、行政院長と立法委員が災害視察をめぐって言い争い、指揮所から街頭まで口論が続いた末、行政院長・県市長・立法委員が連れ立って現場を回る場面まで生じた。一方、与党系のサポーターはなおも「責任追及」をやめない。今回のせき止め湖(天然ダム)事案は、監視から放流に至るまで中央の指揮系統に従う性質のものだ。避難指示が出され、初日は600人、2日目は800人、3日目は24時間足らずで8,000人にまで膨らんだ。この規模は地方自治体だけで数時間のうちにさばける話ではない。それにもかかわらず、卓榮泰行政院長は「徹底検証」を繰り返すばかりで、自身がまず職責を問われるべき立場であることを忘れている。