情報漏えい防止策の「強化版」に、国防総省が号令。《ワシントン・ポスト》(10月1日報道)によれば、ヘグセス国防長官が新規則の導入を進めており、5,000人超の軍人・文民に秘密保持契約(NDA)への署名を義務づけ、さらに無作為のポリグラフ(嘘発見器)検査も課す計画だという。対象は四つ星大将から事務補助職員まで幅広く、逃れられる者はいないとされる。政府は「国家安全保障のため」と説明する一方、退役官僚や法曹関係者からは「恐怖を生む施策」であり、忠誠の強制と異論封じが狙いだとの批判が噴出。加えて、ペンタゴンは政策の外部監視を避けるかのように、メディアへの段階的な制限を強化し、記者会見の回数を削減、常駐記者を排除し、取材者には沈黙条項への同意を求めているという。
ペンタゴンの新兵器:NDA+無作為ポリグラフ
同紙が入手した内部文書によれば、ヘグセス長官は5,000人超の軍・文民職員および契約業者に対し、未承認の「非公開情報」の流出を禁じる厳格なNDAを適用する方針。さらにスティーブ・フェインバーグ副長官が起草した別文書は、職員がいつでもテスト対象になり得る「ランダム・ポリグラフ制度」と定期的な安全面談の実施を提案している。
適用範囲は極めて広く、四つ星大将から事務補助までを網羅。情報機関では数年ごとのポリグラフが通例で、FBIも漏洩源特定に用いるが、ペンタゴン全体で無作為検査を敷くのは初の試みだ。
これらはまだ協議段階で正式承認前ながら、ワシントン・ポストは、トランプ政権とペンタゴンのより大きな戦略の一環として「不忠」と見なす者やメディアへの情報提供者をあぶり出す狙いがあると指摘。これに対し、国防総省の首席報道官ショーン・パーネルは同紙の問い合わせに直接回答せず、メールで「報道は不正確かつ無責任だ」と述べるにとどまった。

国家安全保障の盾か、恐怖統治の道具か
ペンタゴンは新方針を「国家安全保障上の必要性」と説明する。副国防長官スティーブ・フェインバーグ氏はNDA(秘密保持契約)に関する覚書で、機微情報の保護は国家安全、隊員の安全、高官の意思決定余地に直結すると強調。違反者は処罰対象となり、軍人は軍法会議の可能性にも言及した。現行法でも、機密の無許可開示は犯罪であり、機密指定がなくとも「センシティブ情報」の流出は行政・刑事処分の対象になり得る、としている。 (関連記事: 「同意できないなら出て行け」ヘグセス長官が大規模会議で演説 米国防総省の多様性政策を痛烈批判 | 関連記事をもっと読む )
一方で外部からの反発は強い。内部告発者や官僚の弁護で知られ、トランプ政権下で圧力を受けた弁護士マーク・ザイドは、新規則はスパイ対策ではなく「忠誠の強制」だと指摘。これまで政府が広範なポリグラフ実施を避けてきた理由があるのに、過重なNDAと無作為ポリグラフを重ねるのは「職員を萎縮させ、支配を強めるためではないのか」と批判する。元高官の一人も、一定の抑止効果はあり得るとしつつ、核心は外国情報対策ではなく内部告発や異論封じで、「露骨な恐怖戦術」だと断じる。